太田雄貴のEnjoy FencingBACK NUMBER
英語力向上が日本フェンシング強化に?
太田会長の「GTEC」導入の狙い。
text by
太田雄貴Yuki Ota
photograph byJapan Fencing Federation
posted2019/05/31 16:30
「年間活動方針 発表会」の会見は六本木ヒルズで行われ、28もの媒体が集まった。フェンシングへの注目度の高さが窺える。
強豪国ロシアが強くなった理由。
また、こうしたスポーツのあり方は、選手個人の未来を通じて、まわりまわって競技全体の未来へと還元されていくことも、合わせてお伝えしたいと思います。
ロシアはフェンシングの強豪国ですが、彼らが現在強国であること、その背景には、ソ連崩壊後にコーチたちが世界中に散らばっていったことが影響しています。各国で指導することになったコーチたちが、国際大会の会場で集まり、情報交換をするようなコミュニティが、そこにはあるのです。情報戦において、彼らはすでに勝者となっているのです。
たとえば引退した日本選手にしても、もし英語力があれば、たとえばアジア各国などからコーチとして招聘されるということがあるはずです。そこで指導者として結果を出すということは、決して日本への裏切りではありませんし、日本フェンシング界としてもどんどん奨励していきたいところです。その上で、世界レベルでのコミュニティができていけば、日本のフェンシングもさらに発展していくことができるはずです。
「未来」がないスポーツは衰退する。
「Athlete First」から「Athlete Future First」へ――。
この、新しい協会ビジョンについて考えを深めていく中で、こんなことも考えました。
多様化社会の中で、メジャーマイナー、多くのスポーツがあるなかで、「アスリートの未来」を考えない競技は、いずれ多くの人に選んでもらえず、衰退していくのではないか、ということです。
子を持つ親の立場からすれば、当然のことだ、と思います。
そしてフェンシングは、アスリートの未来にしっかりコミットしていきたい。そして、その姿勢をみなさんにご覧いただくことで、“選ばれる”競技になっていきたい。
何より、スポーツのあり方自体が変わってきているのです。選手が試合で勝っていればいいだけの時代は終わったと感じています。発表会でもお話しいたしましたが、スポーツ、そしてアスリートには、インテグリティ(高潔さ)、社会性といったものが求められるべき時代に入りました。私たちが打つ一手は、そのためのひとつのきっかけでもあるのです。