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鳥取から世界へ! 人口5万の倉吉が、
クライマーたちの大切な街になった理由。

posted2019/05/31 16:00

 
鳥取から世界へ! 人口5万の倉吉が、クライマーたちの大切な街になった理由。<Number Web> photograph by Ichiro Tsugane

「ボルダリング・ユース日本選手権倉吉大会」の会場となった、倉吉スポーツクライミングセンター。

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津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

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Ichiro Tsugane

 5月18日・19日に鳥取県倉吉でスポーツクライミングの19歳以下の選手たちによる『ボルダリング・ユース日本選手権倉吉大会』が行われた。世界ユース選手権の代表権のかかったなかで、すべてのカテゴリーで熱い勝負が繰り広げられた。

 スポーツクライミングの場合、ユース年代の出場カテゴリーは、誕生年の1月1日で決まる。開催年の誕生日で18歳、19歳を迎える選手は「ジュニア」、16歳、17歳になる選手は「ユースA」、14歳、15歳になる選手は「ユースB」を戦う。世界ユース選手権では、この3カテゴリーしか実施されないものの、国内ユース大会では、12歳、13歳になる選手たちによる「ユースC」も行われている。

 この大会が始まったのが2015年。当時は鳥取県内の高校で教鞭をとっていた安井博志(現日本代表ヘッドコーチ)の「ユース年代の選手たちのボルダリング強化の場を設けないと世界から置いていかれてしまう」との思いから、大会は立ち上がった。

 スポーツクライミングが東京五輪の実施種目になった2016年以降ならいざ知らず、安井コーチが大会開催に向けて動き始めたのは2014年のこと。徒手空拳で認知度の低い競技の大会開催へ漕ぎつけるためには、最初に出身地の倉吉市に協力を仰いだのは自然な流れだった。

倉吉駅前からバスで20分ほどにある三朝温泉。三徳川沿いの自然豊かな景色にも癒やされる。

 鳥取県中部にある倉吉市の人口は約4万9000人、一般会計は264億円。県庁所在地の鳥取市の約19万人・1001億円、米子市の約15万人・499億円と比ぶるまでもなく、全国の地方都市の中でも決して大きくはない。

 しかし、鳥取空港から40分ほど(1200円)の直行バスで、倉吉駅前に降り立って驚かされるのが、建ち並ぶホテルの数だ。駅から徒歩10分圏内にホテルが10軒ほどあり、総客室数は366、収容人数は約450。これに旅館を含めれば、その数はさらに増える。

 倉吉駅からバスで約10分の市役所などがあるエリアは、江戸中期から明治にかけて商工都市として大いに発展し、いまも豊かさの象徴だった蔵が建ち並ぶため、観光スポットにもなっている。

倉吉の昔からある市街地にある名所・白壁土蔵群。江戸から明治初期に建てられた建物が当時の面影を偲ばせる。

 そこからさらにバスで10分ほど行けば、国内随一のラジウム泉が湧く三朝温泉がある。平日でも湯治客が訪れ、三徳川の河原に湧く温泉をはじめ、多くの旅館で羽根を伸ばしている。この三朝温泉のほかにも温泉地はあり、駅前からどこへもバスが運行している利便性の良さもある。

 しかし、駅前にホテルが多い理由は、そうした観光の受け皿ではなく、市内の大手電子機器メーカーの事業所や大手音響関連会社などへ、商用で訪れるビジネスマンに通年で利用されているからだという。このため同規模の別の地方都市に比べて格段に宿泊施設が整っているのだ。

倉吉文化体育センターの外壁にはリード壁とスピード壁が常設され、体育館内にはボルダリングルームもある。

 そして、これこそが毎年ボルダリングの全国大会を倉吉で開催でき、昨年はアジア選手権まで開催できた最大の要因でもある。

【次ページ】 倉吉の大会で人生が変わった選手。

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