太田雄貴のEnjoy FencingBACK NUMBER
英語力向上が日本フェンシング強化に?
太田会長の「GTEC」導入の狙い。
text by
太田雄貴Yuki Ota
photograph byJapan Fencing Federation
posted2019/05/31 16:30
「年間活動方針 発表会」の会見は六本木ヒルズで行われ、28もの媒体が集まった。フェンシングへの注目度の高さが窺える。
「Athlete Future First」
一方で、このように「現役時」「引退後」のことをお話しすると、単に私自身が苦労してきたことを現役の選手に置き換えているだけなのでは、と思われるのではないかーーそんな思いも頭をよぎっていました。
でも、協会の思いは決してそれだけではありません。
もっともっと、大きな考えのもとで、この一歩を踏み出していることをご理解いただきたい。
そこで今回、新しく、協会のビジョンとして、新しい概念、すべてを包括するような上位概念を、合わせて発表することにしました。
「Athlete Future First」です。
「現在」だけではなく「未来」も。
このところスポーツ界でよく言われており、私たちフェンシング協会も当たり前のように口にしてきた「Athlete First」から一歩進んだ概念としての、「Athlete Future First」。
組織の理屈や利益を重視するのではなく、あくまでも現役選手、現役アスリートがスポーツの価値を高め、最高のパフォーマンスを発揮するための競技環境を整えること。これが一般的な「Athlete First」です。もちろん当たり前のことだと思います。
しかしながらこの言葉は、アスリートの「現在」にだけ注力していればいい、ということにもなってしまう。
長い人生、アスリートは「現在」=「現役」を終えた後、どのように生きていけばいいのか。
たとえばオリンピックに出場する際、選手はもちろんメダルを獲りたいと思い、全力を尽くします。協会もあらゆる形で、サポート、応援していきます。
しかし、仮に選手がメダルをとれたとしても、引退してからの人生の成功が保障されているとは限りません。極端な話、メダルだけに賭けて青春をすべてその競技に捧げた選手の人生が、たとえその後どんなひどいことになってしまったとしても、協会が責任をとることはないのです。
それでいいのか? と問われた時に、「そこは大人なんだし、自己責任でしょ」という声も上がるかもしれません。でも、私たちはそう考えていません。
メダルを獲ることも、選手にとって「未来の目標」であるならば、その先、選手生活を終えた後、社会人としてどう社会に貢献していくかもまた、「未来の目標」ではないか、と考えているのです。
そこで私たちは、アスリートの未来を考えて「Athlete Future First」という新たなビジョンを推進することにした、というわけです。