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青木宣親は個人記録に興味があるか。
自分からチームに移った思考の重心。 

text by

ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

PROFILE

photograph byNanae Suzuki

posted2019/05/28 12:00

青木宣親は個人記録に興味があるか。自分からチームに移った思考の重心。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

青木宣親は日本プロ野球に「成し遂げること」を再び見つけたからこそ、今も戦い続けているのだ。

ヒットよりも大事な「手応え」を得て。

 でも、結局は最終的に「どうして打てないんだろう?」と考え込む。

 考えて、考えて、考え抜いた果てに、たった1本のヒットが出て、また喜ぶ。

 マルチ安打なんて出た日には、思わず鼻を膨らませて「ドヤ顔」を隠せないほど嬉しくなってしまう世界に、彼は飛び込んだのだ。

 アメリカにいる時の彼は、その繰り返しだった。

 日本にいる時よりも明らかに安打量産のペースは落ちた。

 だが、彼は数本のヒットよりも大事な、その後の野球人生に活かす「手応え」みたいなものを手に入れることで、メジャーリーグで生きたという証を得ていた。

 そういう意味で今振り返ると、彼の「メジャー挑戦」は「自分探しの旅」にも似ているような気もするのだが、それは行き当たりばったりの旅とは決定的に違っている。

 なぜなら、彼がそのために使ったエネルギーははっきりした目標=「野球」、とりわけ「自分の打撃」の追求に注がれていたからだ(念のため書いておくが、チームの勝利を気にしてなかったという意味ではない)。

 だから、そういう旅を経て日本に戻った後、史上最速1500安打をはじめとする個人記録にはあまり気持ちが向いていないような気がする。

「プロだから真面目に練習するのは普通」

 そう思う根拠がある。

 今年の1月、ロサンゼルス郊外で自主トレーニングを公開した時、彼は「ああしろ、こうしろ」というわけでもなく、ただひたすら、自分の練習風景の中にヤクルトの若手選手たちを置いていた。

 あの時、青木は常に上田剛史や、西浦直亨や宮本丈や、当時はまだ18歳だった村上宗隆のことを見ていた。そして、こちらが尋ねると、彼らの野球選手としての今や、これからを願う気持ちや、一緒にいて誰がどんな行動をしているのかを、的確に言葉にできた。

「皆、真面目に練習やってるけど、プロだから真面目に練習やってるやつなんて普通だから。じゃあ、そこからどうするのかってのを考えないと。運とかタイミングも大事なんだけど、他のやつよりいい成績残すためにはどうしたらいいんだってことを、自分で見つけないと」

【次ページ】 「自分の打撃」に決着をつけた先に。

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青木宣親
東京ヤクルトスワローズ

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