ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
日ハム玉井大翔の逆転人生に見る、
リリーバーたちの人間ドラマ。
posted2019/05/27 18:00
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph by
Kyodo News
野球に限らず、スポーツの妙味の1つは逆転である。
逆転勝ちの試合は、勝者となるチーム、その選手のファンにとっては痛快そのものだろう。
野球では、大量点差を追い掛ける展開を「ビハインド・ゲーム」と表現することが多い。ビハインド(behind)の対義語は、アヘッド(ahead)。アヘッドは「前進する」という意味をもつ。
プロ野球では、試合序盤で応援しているチームが極度の劣勢となり、終了を待たずに席を立ちたくなるような展開がある。事実、試合途中で観戦している方々が大挙して球場を後にするケースも間々ある。目をそむけたくなるようなゲームの流れになることは、1年間の中でも少なくない。
「敗戦処理」とも言われた時代も。
そんな一戦には時に、逆転人生を賭けたドラマが潜んでいる。絶望的な展開から登場する選手たちのバックボーンをおもんばかり、その姿を注視すると試合の勝敗とは、また違う野球観戦の醍醐味を見つけることができる。
分かりやすいため、投手をモデルケースとして挙げる。先発投手が序盤に大量失点を喫し、球数もかさむ。一方的な展開となった場面で、マウンドへと投入されるメンバーがリリーフ陣には複数、準備されている。
プロ野球が変化し、投手陣の役割が多様化。表現も洗練されてきた近年はそのような表記を見受けることは少なくなったが、過去には「敗戦処理」と記されていた時代もあった。
俗にいう「勝利の方程式」の勝ちパターンで投入される一員ではなく、出番は試合展開に左右される。先発投手の故障といったアクシデントなど、状況に応じてブルペンで準備をし、投入されるのである。
大量点を奪われている場合は、対戦チームの打線は勢いづき、自軍ファンからは失望のムードが蔓延するようなマウンドへと向かう。先発投手とは違い、最初からフラットな勝負とはならない。点差だけではなく、すべてにおいてビハインドな状況で、相手打者と対峙するのである。
第三者から見れば、明らかに酷な役回りである。