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錦織圭が最終セットで異例の3連敗。
全仏ではナダルの山、活路はフォア?
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byGetty Images
posted2019/05/25 17:00
今季のクレーシーズンは今ひとつ振るわない錦織。全仏での巻き返しといきたいところだ。
フォアハンドで支配するか否か。
勝ち星が増えず、自信が揺らいでいるのだろう。だから大事なポイントが取れず、チャンスが生かせない。全体的にショットの調子は上向きでも、競り負ける試合が続くのはそこに原因がありそうだ。
全仏前哨戦のラスト、ローマではディエゴ・シュワルツマンに準々決勝で敗れ、全仏に向けて不安が残った。調子について聞かれると「まあまあですかね。ベストではないですけど。ま、毎週毎週、よくはなっているので、そこまで気にはしていない。全仏に向けてまた気持ちを切り替えていくしかないかなと思います」と答えている。
これまでもそうしてきたように、練習によって自信をつけ、勝ち星を1つずつ増やし、自信を確かなものにしていくしかない。
復調のカギは、フォアハンドにあると見る。錦織にとって「フォアハンドで支配する」ことは大きなテーマだ。ツアー屈指のバックハンドの持ち主だが、得点源となり、ストローク戦のリズムを生むのはやはりフォアだ。ところが今の錦織はこのショットに絶対の自信が持てず、崩れる試合はフォアが不調であることが多い。
すなわち、フォアは調子のバロメーターだ。フォアのクロスが深く入っているか。切れ味のあるダウン・ザ・ラインが打てているか。もっと端的に、ボールがよく伸びているか、という指標でも彼の調子を見定めることができる。
クロスのショットはクレーで大事。
この武器を、いかにベストの状態に持っていくか、調子が上がらなくても、いかに揺らぎを最小限に抑えるか、それが今大会の結果を左右しそうだ。
昨年のローマで、錦織はフォアハンドのいいクロスが入り始めると流れが良くなる、という話をしている。
「それはモンテカルロから感じていました。クロスに跳ねるボールが効いていた。このショットはクレーでは大事なショットになる。ダウン・ザ・ラインの高いところに打つショットも重要ではありますけど、フォアハンドのクロスが昨日よりも確実に今日は伸びていた」
3回戦でフィリップ・コールシュライバーを6-1、6-2と圧倒したあとのコメントだ。ダウン・ザ・ラインへの積極的な展開ということがよく言われるが、クロスにしっかりしたボールが打てて初めてダウン・ザ・ラインに展開するチャンスが生まれる。
また、いいクロスが打てていれば、相手はダウン・ザ・ラインのチャンスを見つけられない。最近の錦織に思いきりのいいダウン・ザ・ラインが少なく、先に展開されることが多いのは、そもそもクロスラリーで優位に立てていないから、という推論も成り立ちそうだ。