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下克上を狙われる立場の錦織圭が、
全仏初戦で取り払った不安要素。
posted2019/05/28 11:30
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Getty Images
数年前に比べ、錦織圭が試合中に苦い表情を見せる回数が増えている。特にランキング下位の選手に苦戦している。
そもそもランキングは1つの指標に過ぎず、一発勝負に番狂わせはつきものだが、それにしても、ランク下位の選手に四苦八苦し、苦悶の表情で進める試合が目立つ。
今年の全豪オープン1回戦がそうだった。
予選から勝ち上がった世界ランキング176位、カミル・マイクシャク(ポーランド)のフラット系のストロークに苦しみ、相手選手の痙攣による途中棄権で辛くも2回戦に進んだ。
この試合を含め、4回戦までの4戦のうち3戦までが最終セットにもつれ、大会が進むにつれて疲労の色が濃くなった。ノバク・ジョコビッチとの準々決勝は途中棄権に追い込まれた。思わぬ苦戦で疲労を溜め、パフォーマンスを下げる悪循環だった。
「5セットばかりにならないように」
したがって、この全仏のテーマの1つは、序盤で苦戦せず、いかにスムーズに勝ち上がるかにあった。開幕前の囲み会見では「全豪のように5セットばっかりにならないようにはしたい。上に上がっていくためには、いい形で勝っていくのが必然的なので」と話していた。
その意味で、主催者推薦で出場の世界ランキング153位、カンタン・アリス(フランス)に6-2、6-3、6-4、所要時間2時間で、すっきりと2回戦に進めたのは大きい。
「いいプレーができた。好スタートが切れて、簡単に2セット取れた。第3セットは相手が攻撃的になって自分のボールも浅くなったが、最後の数ゲームはフォアハンドを使って攻撃的にできた。パフォーマンスには満足している」
と振り返ったように、内容的にも十分、及第点だ。「フォアハンドを使って」主導権を握ることができたのも大きい。
フォアは調子のバロメーターであり、生命線だ。相手の抵抗にあった場面で、まさにそのフォアで状況を切り開いたことは好材料だ。