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雨で異例の1日2試合という過酷日程。
錦織圭、大坂なおみはどう勝った?
posted2019/05/17 11:50
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph by
AFLO
5月16日朝のローマは、前日の雨がなかったかのような青空が広がっていた。
私はいつもとは違う期待感に胸を膨らませ、バチカン市国近くのホテルを出てタクシーで10分ほどの会場に向かった。そう、この日は錦織圭や大坂なおみらほとんどの選手が2試合を組まれていたのだ。
15日は終日の雨で1試合も実施できなかった。大会主催者は日曜日の19日に予定通り決勝を終わらせるため、16日に試合をぎゅうぎゅうに詰め込んだ。その日の試合予定が一覧になった「オーダー・オブ・プレー」のA4用紙には、「こんなに小さいフォントがあったのか」と感心するくらい極小の文字で選手名が書かれていた。
相撲記者時代、番付表に書かれるしこ名が最も小さいため、序ノ口力士が「虫眼鏡」と呼ばれることがあると先輩記者に教わったことを、ふと思い出した。
数秒で取組が終わることもある相撲と比べ、テニスは試合時間が長い。それが1日2試合になったら、果たしてどんなドラマが生まれるのか。前日の雨は、どう影響したか。それが楽しみだった。
ティームは試合後会見で激怒。
いきなり波乱は起こった。世界ランキング4位のドミニク・ティーム(オーストリア)が38位のフェルナンド・ベルダスコ(スペイン)に2回戦で屈した。次世代を担うと期待される25歳が、35歳のベテランに逆転負け。ティームは記者会見で怒りをぶちまけた。
「昨日、僕らが扱われたやり方は本当に嫌なものだった。丸一日、雨が続くことを誰もが分かっていたのに、午後7時か7時半までここで待たされたんだ。
昨夜は近くでサッカーの試合(イタリア杯決勝)があったし、ホテルに帰るのも1時間半くらい掛かった。十分な睡眠時間を取るため、ケアを受ける時間もなくなってしまった。それで今日は午前10時に試合開始。受け入れられることではない。負けた理由の1つだし、かなり怒っている」
長いので割愛したが、ここまで一気にまくし立てた。前日のティームの2回戦は、午前11時開始の女子シングルス2回戦に続く第2試合に組まれていた。試合前の練習などを含めると、恐らく10時間ほどは会場にいたと思われる。
ティームのぼやきは止まらない。「午後2時か3時には選手を解放できたはずだ。雨は仕方ないけど、大会側が少しは選手の手助けをすべきだ」