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ジュビロ黄金期を知る前田遼一は、
J2最下位・岐阜で何を楽しむか。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2019/05/22 11:00
今年の10月で38歳となる前田遼一。岐阜という新天地で得るものは多いようだ。
シュート2本に終わった前田。
前田はこの日シュートを2本放った。そのうちの1本はいい形のシュートだったものの、枠を外している。そして、もう1本はぺナルティエリア内でのヘディングシュートだが、これは右へ開いて受けたボールを中央に落としたようにも見えた。しかし、ペナルティエリア中央のスペースに味方は誰も走り込んでいなかった。
このようなシーンで、味方へのパスではなく、シュートを選択する選手も少なくはない。そして岐阜の選手たちも、前田がシュートを選択すると考えたのかもしれない。
もちろんひとつの場面だけで、判断するのは危険だとは思う。ただ単に、疲労が原因だったかもしれないなど、ゴール前に走り込む選手がいなかった理由は幾つも考えられる。
とはいえ、「前田ならあそこはパスを出すだろう」という共通認識がチームに浸透していないこと、そして強引に個人で打開する判断も、前田に必要とされる意識だと思った。
「難しさは感じている」
高卒ルーキーとして加入した頃の磐田は、まさに黄金期と呼ばれる時代だった。阿吽の呼吸で美しいパスサッカーが描かれた。しかし、その強さを支えたのは走力や泥臭い守備。それを前田は教え込まれた。メディアに得点を褒められても「今日はあまり、走ってなかった」と悔しがっていたことを思い出す。
その後、J2降格を経験したが、それでも、気心の知れた仲間とプレーすることが最善だと考え、移籍を躊躇したこともある。それでもFC東京へと移り、そして今季、岐阜へやってきた。
「大木監督が指揮を執って3年目。長くやっている選手もいるなかで、自分が『こうしたほうがいい』と感じても、それが間違っている場合もある。そういう意味での難しさは感じている」
チームのサッカーを理解し、自身のプレーを周知させ、アピールしなければならない。FWはパスが来なければ、仕事ができないのだから、猶予はない。磐田時代にJ2を戦った当時と、岐阜で戦う今では、同じカテゴリーでもまったく状況は異なる。予算が違えば、おのずと選手も変わる。昨季J1上位争いをしていたFC東京から、J2残留争い中の岐阜へ。
この挑戦は、単なる移籍とは違う難しさがあるのだろう。