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ジュビロ黄金期を知る前田遼一は、
J2最下位・岐阜で何を楽しむか。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2019/05/22 11:00
今年の10月で38歳となる前田遼一。岐阜という新天地で得るものは多いようだ。
円陣の中心でチームを鼓舞。
36分、千葉が4点目のゴールを決める。
ボールを手にした前田は、いち早くセンターサークルへ向かう。仲間を鼓舞しようと手を叩く岐阜の選手もわずかしかいない。意気消沈している様子は一目瞭然だった。仲間を集め、円陣を組む。その中心に立ったのは前田だった。寡黙なストライカーが言葉を発しているのが、スタンドからも見えた。
「前から行くのも中途半端になっている。ボールを繋ぐにも選手同士が遠くなっているから、もう少し選手間の距離を良くしよう」
コンパクトな陣形を取戻すためにやるべきことを明確にする。4点差を取り返すうえで重要なのは、混乱しているチームを落ち着かせることだったに違いない。
再開後、相手に奪われたボールを猛然と追う前田の姿があった。ポジションを下げてでも守備に奮闘する様子は、この日初めて見た前田遼一らしいプレーだった。
「僕は1番前にいるし、チームを変えたいという気持ちはあった。でも結局は変えられなかった……。自分の力不足を感じた。プレーの面でも、ほかの面でも」
大木監督が修正を図るも……。
前半、前田がシュートを打つシーンはなく、チームのシュート数も2本(対する千葉は13本)。45分間を見ただけで、前田が「シュート決定率100パーセント」である理由は想像できた。
シュートを打てるシーンそのものが少ないのだ。一方的だった千葉戦が特別というわけでもないだろう。チームメイトとの連係という部分でも大きな課題があると感じた。
「前半から相手を抑えきれなかった。後半はフォーメーションを変えて、なんとかなったがこの結果」
試合後の大木武監督の言葉通り、岐阜はハーフタイムに修正し、後半はペースの落ちた千葉(シュート数6本)を上回る8本のシュートを放った。しかし63分にも失点。90分に一矢報いるゴールを決めたものの、1-5と大敗した。