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ジュビロ黄金期を知る前田遼一は、
J2最下位・岐阜で何を楽しむか。
posted2019/05/22 11:00
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Getty Images
「イヤイヤ、収穫にはならないですね」
今季2度目の先発、初めてのフル出場について「収穫か」と問われた前田遼一は、即座にそれを否定し、苦笑した。
今季、FC東京からFC岐阜に加入。元日本代表への期待は当然大きい。開幕からベンチスタートが続き、負傷離脱もあった。5月5日の琉球戦に途中出場から1ゴール(○2-1)、5月12日の金沢戦も0-2の後半10分にピッチに立ち、2得点(●2-3)と結果を残す。
そこまでの試合でピッチに立ったのは158分間。放ったシュートは3本のみ。すべてがゴールとなり、シュート決定率100パーセントという記録を残している。
立て続けに失点、前線の前田は孤立。
そして5月19日のJ2リーグ第14節、ジェフユナイテッド千葉戦で先発出場を果たした。
「今までの試合では、結構押し込まれる展開が続いていたので、あまり引かずに前で頑張ろうと試合に入りました。でも、結局、前で戦うわけでもなく、起点にもなれなかった。セットプレーで失点してからは、戦い方がわからなくなった」
この日の対戦相手、千葉も岐阜同様に下位で苦しんでいた。13節終了時点で千葉の勝ち点は14、岐阜は12。試合開始直後は岐阜に勢いがあり、前線でボールを奪いゴールに迫るシーンも見られた。しかし10分、セットプレーから失点すると、12分、22分とゴールを許す。プレスも効果がなく、相手攻撃陣に翻弄され、為す術もない。
組織だけでなく、球際など、選手個々が気持ちを見せていく場面でも、千葉に飲み込まれていた。
前線に立つ前田も、ボールを触るシーンがほとんど巡ってこなかった。何度かクサビのパスを受けるシーンはあったが、ボールを持って前を向く好機はまったくなかった。
自分が下がれば、さらに押し込まれるかもしれない。チャンスを作るには、たとえ孤立したとしても、前に残っているべきか。しかし間延びしてしまえば、それもピンチを招く。チームの一員として、どうするのが最善かを考えていたはずだ。