話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
ガンバの希望をつないだ3人の若者。
高江・高尾・福田が得た自信と勝利。
posted2019/05/21 11:30
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
J.LEAGUE
ガンバ大阪は18日の第12節、セレッソ大阪との大阪ダービーを制し、8試合ぶりに勝利した。
降格圏から脱する14位に順位を上げたが、この勝利は勝ち点や順位以上に持つ意味が大きい。
大阪ダービーは、試合前からサポーターが作り出す雰囲気が本当に素晴らしかった。
ガンバの選手バスが入る動線にはサポーターが幾重にも連なる。ただの1試合ではない独特のムードを作り、選手をスタジアムへと導いた。
サポーターが生み出す熱量も圧巻だった。重低音で張りのある声援が突き抜け、飛び跳ねるサポーターにスタジアム全体が揺れ、ボルテージが高まる。選手入場時点から最高のステージを作り出していた。倉田秋が「やってやる」と魂を燃やしたというが、選手は一様に気持ちを高ぶらせていたのだ。
ピッチ上に広がったメンバーは、きっと多くのファンを驚かせたことだろう。
高江、高尾、福田の3人を抜擢。
「鳥栖戦後のオフからシステムとメンバーを考えていました」
宮本恒靖監督がこの悪い流れを断ち切るために出した結論は、ほとんど試合に絡んでいない若手3人の抜擢であり、3-1-4-2システムの採用だった。
ボランチの高江麗央は今シーズン1試合9分間のプレーのみ。センターバックの高尾瑠と左ウイングバックの福田湧矢にいたっては今季リーグ戦初出場、初スタメンだった。
ガンバはダービーに向けて3人が入ったメンバーでシステムを組み、練習を重ねてきた。これまで守備が破たんしていた状況を踏まえると、かなり攻撃的な3-1-4-2には選手も難しさを感じていたようだ。
だが、宮本監督はそこで引いて守るのではなく、積極的に前に出て守備をする意識を選手に植え付けた。そして「後がない」と言い続けることで危機感をあおり、試合に集中させた。
紅白戦では控え組に遠藤保仁や今野泰幸、米倉恒貴らが入った強力なメンバーを仮想セレッソとして戦い、ゼロに抑えて手ごたえを得た。本職はサイドバックながら右センターバックに入った高尾は「レベルの高い紅白戦でゼロに抑えたんだから、自信を持ってやれ」と宮本監督に言われ、自信を深めたという。
そうした経緯を経て、彼らは「救世主」となるべくピッチに立った。