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令和に語り継ぐ、J平成名勝負(10)
~2018年第30節:川崎vs.神戸~

posted2019/05/14 10:30

 
令和に語り継ぐ、J平成名勝負(10)~2018年第30節:川崎vs.神戸~<Number Web> photograph by J.LEAGUE

イニエスタがいる。それだけで会場には高揚感が漂ったが、川崎がそれを打ち砕いたというのが痛快だったのだ。

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北條聡

北條聡Satoshi Hojo

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J.LEAGUE

「令和」の世の中で、Jリーグは相変わらず熱戦の連続である。ただ時代は変わっても「平成」の語り継ぎたい伝説も数多い。そんな記憶に残る名勝負を北條聡氏と飯尾篤史氏の2人に回顧してもらった。最終回は2018年、このシーズンJ1連覇を飾ることになる川崎フロンターレと、アンドレス・イニエスタが加入したヴィッセル神戸の一戦だ。

 相手に何もさせなかった――。

 そんな賛辞のよく似合う絶対的な強者には名勝負が生まれにくい。ただただ敵を一方的にやり込めて終わりだからだ。

 当代随一の名将ペップ・グアルディオラが率いたバルセロナ(スペイン)の最盛期もそうだった。故ヨハン・クライフが礎を築き、直系の弟子たるペップが引き継いだバルサの幹の1つが、この「相手に何もさせない」という哲学、戦術思想だろうか。

 僕のボールは僕のもの。君のボールも僕のもの――。

 ひとたびピッチに立てば、侵攻と略奪の嵐である。言ってしまえばジャイアン的。しかも絢爛華麗なパスワークという見映えの良さで人々を虜にしてしまう。言わば、イケメンのジャイアンだ。

 プロ化から四半世紀が経ったJリーグで、イケメンのジャイアンが現れたケースはほぼない。マイボールでは男前も相手ボールでは及び腰。略奪どころか、自陣に引きこもる。そんなイケメン風のび太が多かったからだ。数少ない例外と言えば、流動的なパスワークと苛烈なプレッシングで武装された最盛期のジュビロ磐田くらいだろう。

イケメンのジャイアン、川崎。

 だが、ついに現れたのである。イケメンのジャイアンを志す勇敢な一団が。ほかでもない、川崎フロンターレだ。

 個々の技術を徹底的に磨く風間八宏前監督がボールを持って敵陣に押し込むスタイルを定義し、根づかせると、2017年に跡目を継いだ鬼木達監督が相手ボールの即時回収という補完作業に着手する。すると、あっさりJ1初制覇。さらに、継続へと移行した昨年に連覇を成し遂げる。

 その途上で、名勝負が生まれた。

 川崎に真っ向から挑むチームがあったからだ。ヴィッセル神戸である。日本代表が16強入りしたロシア・ワールドカップが終わってもなお、サッカー界がざわついていた。

【次ページ】 ヤツだ、イニエスタが来たんだ!

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