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令和に語り継ぐ、J平成名勝負(10)
~2018年第30節:川崎vs.神戸~ 

text by

北條聡

北條聡Satoshi Hojo

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photograph byJ.LEAGUE

posted2019/05/14 10:30

令和に語り継ぐ、J平成名勝負(10)~2018年第30節:川崎vs.神戸~<Number Web> photograph by J.LEAGUE

イニエスタがいる。それだけで会場には高揚感が漂ったが、川崎がそれを打ち砕いたというのが痛快だったのだ。

だが憲剛と川崎は落ち着いていた。

 それでも、43分に追撃の1点を決めて後半に折り返す。スローインの流れから敵陣右奥を鋭く突いた大島の折り返しを、家長昭博がワンタッチで流し込み、2-3。このあたりから好ゲームの予感が漂いはじめた。

 後半に入ると、川崎は相手ボールのときの立ち位置を調整し、プレスの強度を高めていく。いや、それ以上にボールキープしながら敵陣深く押し込む本来のスタンスに立ち返った。それを、中村がこう振り返る。

「とにかく、落ち着いて、ていねいにやること。それが一番確実で、なおかつ速い。それをやり続けようと」

 こうして川崎のボールがテンポよく回りはじめる。すると65分、鮮やかな速攻から同点ゴールが生まれた。自陣の深い位置から放った中村の縦パスから家長が鋭く反転し、一気に敵陣へ。最後はエリア内での1対1を制した齋藤学がゴール右隅にねじ込んだ。

美しすぎるパスワークから大島。

 そして、わずか4分後にクライマックスがやって来る。超満員にふくれあがったスタジアムを揺るがす逆転ゴールだ。それもめくるめくようなパスの連続から生まれた。

 ボックス右のエウシーニョから中央の家長へボールが渡ると、背後から走り込んだ大島へバックヒール。これを大島が間髪を入れず左前の小林に預けて前進し、目の前に転がってきたリターンを左足で突き刺した。

 中村が「めったにお目にかかれない素晴らしい崩し」と褒め称えれば、小林も「自分たちの理想とするパスワーク」と胸を張った。逆にクールだったのが家長だ。

「あのゴールは練習でやっている形。それを試合でやっただけ」

 それこそピンボールのようなパスワークは王者川崎の金看板。あのくらいで騒いでもらっちゃあ困るという自負だろうか。いや、それにしても、記憶のミュージアムにいつまでも飾っておきたいシロモノだった。

 この珠玉の4点目が事実上のトドメだったが、そこで攻めの手を緩めないあたりがSっ気たっぷりの川崎らしい。76分にイケイケのエウシーニョがダメ押しの5点目。いかにもジャイアンらしく名勝負を締めくくった。

【次ページ】 見せてもらおうか、J1王者の……。

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