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プレス戦術家ラングニックと考える、
ペップとクロップとサッカーの未来。 

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ラース・ヴァルロット

ラース・ヴァルロットLars Wallrodt

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photograph byGetty Images

posted2019/04/17 11:30

プレス戦術家ラングニックと考える、ペップとクロップとサッカーの未来。<Number Web> photograph by Getty Images

グアルディオラ(左)とクロップ。プレミアが誇る二大戦術家について、ラングニックが分析してくれた。

ペップとクロップ、最大の違いは?

――ペップ・グアルディオラとユルゲン・クロップは、どちらも数年前までドイツのクラブを率いていました。現在ペップはマンチェスター・シティで、クロップはリバプールで成功を収めていますね。

RR 2人とも非常に高いレベルで見事な仕事ぶりを見せています。ボールキープの方法だけでなく、チーム全体で試合を支配しよう、持ち手をたくさん用意しようという意識でプレーをさせています。

 肉体的にも意識的にも、多くの選手を1段、また1段とステップアップさせていますよね。現代サッカーがますます高速化する中で、とくに選手の「意識」を研ぎ澄ますことは重要な意味を持ちます。ほんの少しの気の緩みが大きな危険を招きかねないのを分かっているわけです。

――ペップとクロップの最大の違いはどこにあるのでしょうか?

RR ペップが自分の流儀を変えないことはよく知られていますね。彼が指導するチームはボールポゼッションを高めてゲームを支配します。バイエルン時代にはブンデスリーガで80%の支配率を誇っていました。こうなると相手チームはほとんどボールに触れません。

 一方のクロップはドルトムントでもリバプールでも従来通り、非常にアグレッシブなプレスを仕掛けてきます。彼の選手は相手を追いかけ回す、別の表現を用いれば「狩りをする」ごとくプレーします。どちらもボールを失った瞬間にスイッチを入れ、プレッシャーをかけるのは共通ですが、リバプールの場合は、自分のマークを捨ててでも3人、4人がほぼ同時にボールホルダーへ襲いかかる。相手に対し時間と空間の余裕を与えない。息つく間もないのです。

 別の観点から言えば、ペップも熱い血の持ち主ですがクロップよりは抑えが利く。ですからピッチサイドで興奮する余りキレてしまうようなこともないわけです。クロップが感情的に訴えるのとは逆に、ペップは「より専門的に」仕事に向かっているということになるでしょうか。

 ペップは何時間もかけて細部に至るまで策を練ります。ピッチ上で起こりうるすべてを事前に掌握したいからです。しかしクロップは、チームが“燃え盛る”のを見たい。これらは間違いなく両者の性格の違いからくるものです。2人ともとにかく猛烈な仕事師です。次の試合(対戦相手)に向けて完璧な準備を行なっていますよね。

 もっとも、2人のシステムは、選手みんながテクニックと戦術面で優れていなければ機能することがありません。2人ともそうした選手を揃えていることこそ、最大の強みになっていますね。

【次ページ】 フィルミーノはモダンなFWである。

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