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プレス戦術家ラングニックと考える、
ペップとクロップとサッカーの未来。
posted2019/04/17 11:30
text by
ラース・ヴァルロットLars Wallrodt
photograph by
Getty Images
プレミア勢は欧州で勝てない。
上位6つのビッグクラブの力が拮抗し、ウインターブレークもない。国内戦での消耗が激しすぎるゆえ、彼らのチャンピオンズリーグ制覇は難しい、そんな見方が定着して久しい。実際に2011-12のチェルシーを最後にプレミアリーグからCL優勝チームは生まれていない。
だが昨季はリバプールが準優勝、そして今季こそ定説が覆るかもしれない。
現在、決勝トーナメント準々決勝が進行中のCL8強には、プレミアリーグの全4チームが進出。なかでもリバプールとマンチェスター・シティは、国内でも熾烈なマッチレースを演じているプレミアの2強だ。
稀代の名将ペップ・グアルディオラと宿敵ユルゲン・クロップに率いられた両チームは、それぞれ違った形で強く魅力的なサッカーを展開し、頂点を狙っている――。
そんな2人の指揮官は、どのような哲学と手腕を持っているのか。かつて彼らが鎬を削ったブンデスリーガから、ゲーゲンプレスの潮流を生み出したラルフ・ラングニックに話を聞いた。
サッカーの戦術的進歩の要因とは。
――あなたは監督としてホッフェンハイムやRBライプツィヒで新しいスタイルを具現化した後、スポーツディレクターの立場を経て、今シーズン1年間限定で再び指導の現場に復帰(RBライプツィヒ監督)しました。この10年間のサッカーの戦術的進歩について、どう見ているのですか?
ラルフ・ラングニック(以下RR) より重要性が増したと言えますね。どのチームも以前より多くの「システム」と「戦術」を持ち込むようになりました。この場合の「システム」とはフォーメーションや基本的な取り決めといった概念であると私は解釈しています。
また「戦術」とは試合に向けてのメソッド(方法)とストラテジー(戦略)を意味します。戦術のバリエーションたるや、古典的なマンツーマン・ディフェンスから始まり、1対1の局面で、あるいは集団で激しくボールを奪いに行くプレッシングまで、かなりの数にのぼります。
そしてコーチングスタッフに専門家が常駐するようになったのも特徴的です。分析やイノベーションの専門家です。RBライプツィヒのスタッフには監督を支える昔ながらのアシスタントコーチの他に、分析担当にもアシスタントコーチがいる。多くの監督とクラブが、独自性に溢れた指導哲学を打ち立てようと努力していますが、それが成功したかどうかはひとえにチームの結果次第となるものです。