ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
ユーベ相手に大健闘のアヤックス。
有望株とタディッチの融合で今が旬!
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph byGetty Images
posted2019/04/11 17:50
アヤックスは第1戦でドローに終わったが、タディッチ(左)を中心としたサッカーは期待を抱かせた。
プレミアではスターになれず。
そんなタディッチは、昨年の夏にサウサンプトンから1140万ユーロの移籍金でアヤックスへとやってきた。
サウサンプトンでは4シーズンを過ごし、公式戦162試合に出場して23ゴールを挙げた。主力の1人ではあったし、素晴らしいプレーも度々見せていた。しかし「面白いが一貫性がない」というのが彼の評価で、正真正銘のプレミアリーグのスター選手と呼べるだけの活躍をしていたとは言い難かった。
特に彼をイングランドに連れてきたロナルド・クーマン監督が2年目を最後にセインツの監督を退任してからは、クロード・ピュエル、マウリシオ・ペジェグリーノ、マーク・ヒューズと守備を基本に考えた保守的なサッカーをする監督ばかりだったこともあり、タディッチのクリエイティビティが十分に生かされることはなかった。
最近になって、彼はサウサンプトンを退団した理由を、現地のメディアでこのように語っている。
「最初の2年間はクーマンと素晴らしいチームを組むことができた。7位、6位とクラブ史上最高のシーズンを過ごせたし、優秀な選手も多かった。でもその後の3年目、4年目はどんどん悪くなっていったんだ。多くの選手を売却したし、とても難しかった。その頃から少し、プレミアリーグに疲れてしまったんだ」
また、圧倒的なフィジカルが求められるプレミアリーグにおける技巧派ならではの悩みも彼を苦しめた。
「攻撃的な選手にとっては、プレミアリーグは“プロテクト”してもらえないからあまりいい環境ではない。何度も蹴られて、飽き飽きしていた部分もある。試合が終わるたびにどこかを氷で冷やしていたのを思い出すよ。キャリアが終わったら、もうコップに入った氷も見たくないくらいさ。オランダでは蹴られたらファウル。ちゃんと保護されていると感じるよ」
若いチームを牽引するリーダー。
他のプレミアリーグのクラブからもオファーがあったが、かくしてタディッチは以前もプレー経験があったオランダへと戻ることを選んだ。そして声をかけたのが、優秀な若手選手が多く集まる魅力的なチームであり、同時に経験豊富なリーダー格の選手を欲していたアヤックスだったのだ。
結果的に、タディッチの獲得はアヤックスにとって大成功だった。タディッチはエールディビジでここまで20ゴール、CLでも6ゴールを挙げて1年目にしてサウサンプトン時代の総得点数を上回る活躍を見せているが、数字以上に前述したような仲間を生かすプレー、さらにリーダーとして若い選手を引っ張る姿勢が、チームを前進させている。