ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
ユーベ相手に大健闘のアヤックス。
有望株とタディッチの融合で今が旬!
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph byGetty Images
posted2019/04/11 17:50
アヤックスは第1戦でドローに終わったが、タディッチ(左)を中心としたサッカーは期待を抱かせた。
世代がうまく融合するアヤックス。
今のアヤックスは、若手とベテランのバランスが絶妙だ。30歳のタディッチが22歳のネレスや26歳のツィエク、21歳のカスパー・ドルベアといった選手を生かす前線だけでなく、守備陣を見ても、19歳でキャプテンを務めるマタイス・デリフトの隣で彼を支えるのは、タディッチと一緒にプレミアリーグから帰ってきた元マンチェスター・Uのダレイ・ブリント(29歳)だ。
21歳で同い年のデヨングとファンデベークがいる中盤でも、7年目の古参で32歳のラッセ・シェーネが要所を締めている。だから、スタメンの平均年齢こそCLの8強で最年少の24歳202日でも、アヤックスには一般的にフレッシュな勢いと表裏一体とされる波が少ない。
そうした環境を与えられた充実感と、前線で存分に攻撃センスを発揮できるチームのスタイルが、タディッチをキャリアハイのパフォーマンスに導いている。同時に、普段から日々のジムワークを欠かさないことで知られる彼はC・ロナウドばりの肉体美を誇る選手としても有名だが、力強さの部分はプレミアリーグの環境でさらに磨かれた感がある。
178cm・72kgと決して大柄ではないがレアルやユーベのDFと相対しても決して力負けせずにポストワークをこなせるのは、イングランド・スタイルで揉まれてきた賜物だろう。
「人生最高のゲーム」の更新なるか。
柔と剛を兼ね備えたタディッチが裏で糸を引くアヤックスの攻撃は、間違いなく欧州フットボール界で“いま見るべき”代物だ。CL準々決勝は、まだ半分が終わったばかりで、イタリア王者にとってアウェーの第1戦で1-1のドローは悪い結果ではない。勝ち抜けの可能性が高いのは今もまだユベントスの方だろう。
しかし、アヤックスにとっても格上相手に初戦でドローは上々の結果と言える。
「(ベルナベウで)R・マドリーを倒したのは、おそらく僕にとって人生最高のゲームだった。チームメートの多くもそう感じたはずだよ」と語っていたタディッチだが、「人生最高のゲーム」を更新するチャンスはまだある。
トリノの地でもタディッチと仲間たちが躍動し、1996-97シーズン以来22年ぶりのCLベスト4進出を果たしても、決して不思議はない。