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「ハーフの子供たちのために」
八村塁のルーツへの誇りと自信。 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byYukihito Taguchi

posted2019/04/15 08:00

「ハーフの子供たちのために」八村塁のルーツへの誇りと自信。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

八村は「小さい子たちをインスパイアするような人になりたい」と話す。

「固い絆……でもないですけど」

 今年3月、NCAAトーナメントが始まった頃、日本のメディアがそれほど多くなかった日に、少しゆっくり話を聞く機会があったので、弟や妹がいじめられたときに「殴り込みにいった」という話の真偽を聞いてみた。

「そんなのもあったかも知れないですね」と八村は笑った。

「(兄弟の間では)喧嘩してたんですけど、でもやっぱり外から来ると(いじめられたりすると)、僕がもう絶対に守りに行っていたので。富山で黒人っていうのは僕らぐらいしかいなかったので、そういうのはあるかも知れないですね。固い絆……でもないですけど」

 この「……でもないですけれど」というのは、取材中の八村の口癖のひとつだ。照れ隠しなのか、無意識なのか、断言する代わりに「……でもないですけれど」とつける。実際のところは、八村の家族に対する愛情は深く、長男だけに、弟や妹たちを守らなくてはという強い責任感も持っているわけで、間違いなく「固い絆」を持つ家族だ。

 かつて、大事な弟や妹を守ろうとしていた八村は、今では自分に憧れ、アメリカでの活躍を応援してくれる日本中のハーフの子供たちに対しても、弟や妹を守るのと同じような気持ちを持つようになっていた。

ハーフが珍しくないアメリカ。

 八村が、アメリカに出てきて生活してみてわかったことがあった。アメリカはハーフの人たちだらけということだ。アフリカだけでなく、ヨーロッパ、アジアなど、世界中から移民してきた人たちが、他の人種の人と結婚して子供が生まれる。そうやって複数の人種の血を受け継いでいる人たちによって築かれている国なのだ。

「(ハーフの人たち)しかいないんで」と笑う。自分と同じように、アフリカ系の血を引く人たちも大勢いる。と同時に、『黒人』とひとくくりでまとめられてしまうアフリカ系の血を引く人たちの中にも、実はいろいろな人種がいるのだということにも気づいたという。

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八村塁
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