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ユーベに馴染んだC・ロナウド。
レジェンドも望む23年前の再現。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byItaru Chiba
posted2019/04/10 11:30
CLのラウンド16、A・マドリー相手に1stレグを0-2で折り返したユベントス。2ndレグでC・ロナウドがハットトリックを決め、逆転勝利を果たした。
'96年チームになかったもの。
レジェンド2人の口が重くなったのは、現チームと'96年の優勝チームを比較してほしいと尋ねたときだ。OBとしてはどちらにも優劣をつけたくないのだろう。ディリービオは「時代もライバルも異なるから比較は難しい」と言葉を濁した。
そこで、ゲームでの役どころとしてFWディバラをFWデル・ピエロに、MFピアニッチを中盤の要パウロ・ソウザに喩えたところ、トリチェッリは同意してくれた上で、意外なことを口走った。
今季のチームには、'96年の優勝チームより明らかに上回っているストロング・ポイントがある、と。
「我々がCLを制したとき、P・ソウザとMFデシャン、DFヴィエルコウッドとFWヴィアッリ、この4人をのぞいて、私を含むチームの大半はCLでの経験をほとんど持ってなかった。あれは大会に不慣れな若いチームだったんだよ。それに比べて、現チームの選手たちは誰もがすでにCLで多くの試合を重ねている。大会への経験値という意味では、実は今季のチームの方がずっと分がある」
それに自分たちのチームにはC・ロナウドはいなかった、とトリチェッリは快活に笑った。
「A・マドリーとの2ndレグで見せたハットトリック、あれはチーム全体に“今年こそ優勝できる”という確信を植えつけたと思うね」
“怪物”との対峙を回想。
そこで、ある質問をふと思いついた。
貴方なら、C・ロナウドをどう封じますか?
ちょうど左ウイングの対面にあたる右サイドバックの名手だったトリチェッリは、“そうきたか”と言わんばかりにしばし思案顔になった。
「……うーん、さてどう止めようか(苦笑)。あの頃、(インテルの)“怪物”ロナウドと対決していたことを思い出すな。彼への対処法がヒントになるかな」
元祖ロナウドとC・ロナウドの意外な接点に驚くこちらを尻目に、トリチェッリは'96年当時のユーベのフォーメーション図を指差しながら、冷静に“仮想ロナウド潰し”を解説してくれた。
「“怪物”も“クリスティアーノ”もマークする立場としては最高に厄介な相手だ。一対一は絶対に避け、チームメイトと協力して迎え撃つ。
まず、右サイドハーフのMFコンテと私、前後で挟み込むのが第1フェーズだ。コンテには、ロナウドが私の守備ラインに到達するまでできるだけ激しく追い込んでもらう。それから私がロナウドに密着して2人でチェックをかけるのが2段階目。右センターバックのDFフェラーラには寄せのスピードがあるから、(抜かれた場合を想定してゴールに近い)私の左側をケアしてもらう3段構えだ。
トップクラスのアタッカーがここぞと仕掛けてきたときには、最も近いMFとDFと3人で組んで相手を追い込んでいくのが我々のセオリーだった」
ベスト16ラウンドで大逆転劇の主役となったロナウドは、あの夜完全に“ユーベの王”になった。