炎の一筆入魂BACK NUMBER
大瀬良大地がカープで慕われる理由。
相談も雑談も「話しやすい」エース。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2019/04/08 11:40
巨人戦、阪神戦での2登板ともにエースらしい内容の投球。大瀬良はいよいよ、カープのエースの風格を備えつつある。
マエケン、黒田から学んだこと。
「一喜一憂しないようにしている。昨年から意識してやってきた。もう1つ上のレベルに行くには、そうしないといけないかなと」
5日の阪神戦でも、同点の4回1死満塁から併殺打に打ち取っても感情を表に出すことはなかった。また、7回に中谷将大の打球が左翼ポールを直撃する逆転2ランとなった瞬間も、表情を変えようとはしなかった。
この日、自身は「ここ数年でワーストに近い」状態でありながら、最低限試合をつくった。
それでも「(本塁打された)最後の1球を抑えきれないと。昨年なら試合を作れたとなっていたかもしれないけど、昨年よりも1つ先の反省をしていかないといけない」。大瀬良は今年、まだ見ぬ道を歩きながら、変わろうとしている。
プロ入りした広島には、前田健太(ドジャース)、黒田博樹氏という偉大なエースがいた。
「マエケンさんとはよく話をさせてもらった。黒田さんの姿を見てきて(変わる)必要性を感じた」
感じ取るのは選手次第。大瀬良には受け継ぐ資格も、覚悟もあった。
すでに「エース」と呼ぶ声も聞くが、まだエースではない。大瀬良自身が「まだ完全な信頼を得られていない」と感じているように、今以上の揺るぎない信頼が必要となる。
先発1番手として迎えた昨年の日本シリーズだったが、エースと呼べる信頼はなかった。第1戦は5回で降板。指名打者制が敷かれるヤフオクドームでの第5戦は、5回1死二、三塁でクリーンアップを迎えたところでマウンドを降りた。
「短期決戦なのでチームが勝つための最善策を取っただけ。悔しさはあるが、仕方がない」
そう冷静に振り返るが、一方で「昨年以上の成績を残して、短期決戦でしっかりとチームを勝ちに導いていけるような投手になりたい」とも言う。2試合で計9回 1/3 。1勝もできなかった悔しさは今も胸に残る。
それでも優しさは変わらない。
以前当コラム「優しい人間は生き残れない世界で。広島・大瀬良大地が求める強さの形。」(※https://number.bunshun.jp/articles/-/828527)で記したように、大瀬良は優しい男だ。
チームメートにも報道陣にも、そしてファンにも優しい。優しさはプロの世界ではときに弱さと捉えられることもある。
成長のためには変わらなければいけないし、成長するためには強くならなければいけない。ただ大瀬良は新境地を切り開こうとしながらも、変わらない優しさを同居させる。