炎の一筆入魂BACK NUMBER
大瀬良大地がカープで慕われる理由。
相談も雑談も「話しやすい」エース。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2019/04/08 11:40
巨人戦、阪神戦での2登板ともにエースらしい内容の投球。大瀬良はいよいよ、カープのエースの風格を備えつつある。
打たれた島内に、失敗談を語る。
2日の中日戦後のことだ。大瀬良と同じ九州共立大出身の島内颯太郎が、リードした展開から登板したものの、逆転負けにつながる投球をした。2人は事前の約束通り食事をしたという。いつも以上に口数が少ない後輩に、笑いながら言った。
「つらいよな。分かるよ。俺、黒田さんの勝ち星を消したとき、腹切ろうかなと思ったもん」
今だから笑い話にできる、自身の失敗談を優しく語りかけた。それはまるで下を向くなと励ましているようでもあり、カツを入れているようでもある。
「中継ぎは大変だよ。でも次の日にもやり返せる……。やり返せ」
温かくも力強いエールだった。
最後まで島内の口数は増えなかったというが、4日の中日戦で島内は1回を三者凡退。プロ3試合目の登板で無失点に抑え、先輩の優しさに応えた。
大瀬良のもとには多くの後輩が集まる。
同じ大学の後輩だけではない。今年は若い選手が大瀬良のもとに集まる姿をよく目にする。トレーニング法や投球フォームについての助言を求めるだけでなく、雑談に花を咲かせる場面もみられる。
大瀬良が歩んだ、決して順風満帆ではないプロ野球人生から学びたいという意識もあるのだろうが、何より大瀬良の人柄が人を集める。オフに自主トレをともにした戸田隆矢は「大瀬良さんなんで。話しやすいですし、いろんなことを教えてくれる」と感謝していた。
チームでの立場の変化も、理解している。
「下の子も増えてきているので、ちょっとでもアドバイスできるようにやっていきたいなという思いはあります。しっかりとチームの立ち位置としても投手の柱と見てもらえるような姿勢を見せていきたいですし、実績を積み重ねていきたいです」
エースとは、投げてチームを勝たせるだけじゃない。それもまた、過去のエースが教えてくれたことだ。