Jをめぐる冒険BACK NUMBER
サンフレッチェ城福浩監督の信念。
選手を愛し、辛くても「冷徹に」。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2019/04/05 11:00
インタビューに応じた城福浩監督。2018年のサンフレッチェとチームマネジメントについて熱く語ってくれた。
情が移ると、たいがい失敗する。
――選手をフェアにジャッジするために、自らに課していることはありますか?
「それはね、まず自分のやりたいサッカーをブレさせないこと。その根底に闘うとか、諦めないとか、去年培った本質の部分があるうえで、やりたいサッカーがある、という順番を絶対にブレさせない。それが、評価基準がブレないことに繋がるから、そこは大事にしています。その次に、頭から湯気が出るようなトレーニングを毎日積むこと。
はい、ボール回しをしました、はい、クロスからシュート練習しました、そんなんで、選手の何を評価できるのか。コンディションの許す限りにおいて日々、激しいトレーニングを積むからこそ見えるものがある。そのときの選手の頑張りを見逃さないようにしています」
――でも、フェアにジャッジしたくても、ある選手に情が移ったりすることもあるんじゃないですか。こいつ、頑張っているから使ってやりたいな、というような。
「もちろん。おそらくそれが、監督業をやるうえで一番難しい部分かな、僕にとって。やっぱり自分が率いるチームの選手を好きになれなければ、この仕事はできないし、彼ら一人ひとりを成長させたいと本気で思えなければ、監督なんてできない。
監督という職業は『勝ったら選手のおかげ、負けたら監督のせい』とよく言われるけれど、この職に就いている者はみんな、そう思っているんじゃないかな。彼らとともに戦いたい、と本心で思っているから。でもね、その一方で、メンバーを選ぶときは冷徹にならなければならない。30人弱のメンバーから18人、さらに11人を選ぶというのは、外す作業でもあるわけです。これは本当に辛いし、苦しい」
――先ほど、森崎選手の起用に関して、「センチメンタルな想いはなかった」とおっしゃっていましたが、過去に情に流されて起用したことは?
「ある。やっぱり日々ピッチで一緒に汗を流していると、情が移るから。でも、そういうときって、たいがい失敗するんです。情で起用してうまくいかなかったときのしんどさは、僕も経験してきています」
――こいつ、古巣との対戦だからとか、こいつ、引退間近だからとか。
「そう。でも、それで結果が出なくても、それは選んだ自分の責任だから。たくさん後悔してきたけれど、誰のせいにもできない。今だって毎日、こいつをどうにかしたい、こいつ顔色が変わってきたぞ、こいつ今、悩んでいるのかなって、接すれば接するほど情が入るわけ。
それこそ、(かつて指揮を執った)甲府時代からの付き合いの選手もいるし、アオのように去年、復活を遂げた選手もいる。去年の2位の功労者だって、たくさんいる。でも、自分の評価基準があるのに、情のほうを優先すると、基準がグチャグチャになってしまう。情は自分にしか分からないものだからね」