Jをめぐる冒険BACK NUMBER
サンフレッチェ城福浩監督の信念。
選手を愛し、辛くても「冷徹に」。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2019/04/05 11:00
インタビューに応じた城福浩監督。2018年のサンフレッチェとチームマネジメントについて熱く語ってくれた。
若手に指定席を与えるのではなく。
――短期・中期・長期と目標設定があるなかで、もともと1年目はどう位置づけていたんですか?
「サンフレッチェはこの10年、森崎兄弟(和幸と浩司)、佐藤寿人、アオ(青山敏弘)、高萩(洋次郎)といった選手たちを育てて、3回のリーグ優勝を果たしたわけですよね。でも、その間、主力選手が引き抜かれていったし、今ピークの選手を獲得できるほど潤沢な資金があるわけでもない。そんなクラブがどうやって優勝するかと言ったら、若い選手を育てていくサイクルを作らないと難しい。
だから、クラブとしては、この10年のような、新しいサイクルを作りたいという考えがあると思う。それは僕も理解しているけれど、だからといって、スパッと若手に切り替えればいいわけじゃない。若い選手に指定席を与えてプレーさせるんじゃなく、競争を勝ち抜いて出てこなければ、成長できないから。それで去年、フェアにジャッジした結果、前年に悔しい想いをして、その悔しさを晴らしたいと願うベテランのほうが、どう見てもよかったんです」
――なるほど。フェアにジャッジした結果として。
「だから、今年のメンバーに関しても、これまでのキャリアとか、去年の2位にどれだけ貢献したかではなく、今のパフォーマンスをフェアにジャッジしているつもりです。その結果として、今は若い選手がたくさん試合に出ているけれど、ケガで出遅れているアオやゴロウ(稲垣祥)、(林)卓人が戻ってきたら、どうなるか分からない。
アオも、ゴロウも、卓人もプレーでチームに貢献したいと強く思いながら、チームの一員として自分のやれることを黙々とこなしてくれている。そんな状況のなかで出場機会を掴んでいる若手が、彼らがいないうちにどれだけ自信と経験を身につけられるか」
――青山選手、稲垣選手、林選手が戻ってきたとき、本当の競争がスタートすると。
「そう。それともうひとつ、もちろん世代交代は必要だけど、結果に目をつぶっていいわけじゃない。この10年間、サンフレッチェは素晴らしいサイクルを作ったけれど、その初期段階でJ2に降格して、血も流しているでしょう。降格したタイミングで出ていった選手もいるし、J1に復帰したタイミングで出ていった選手もいる。だから、今度は結果を出しながら、次の世代へと繋げていきたい。それは、クラブと自分の新しいチャレンジだと思っています」