ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
プロレスで他人の技を使うのはOK?
豊田真奈美のツイートで論争が勃発。
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byAFLO
posted2019/04/02 11:00
長州力の得意技と言えばサソリ固め。藤波辰巳の“掟破りの逆サソリ”はテレビ中継を見るファンにとって衝撃だった。
棚橋が見せた馬場へのリスペクト。
しかし、その全女が崩壊してすでに14年。かつて全女に存在した掟は、多団体時代になってからなし崩し的に失われていき、いまはそのルール自体を知らない選手が多数を占める。もはや技の継承という文化は絶滅しつつあり、今後は開発者が他人に使用してほしくない旨を語ったところで、それを制限することはできないだろう。
ただし、時に技は言葉以上に雄弁に、そのレスラーの気持ちをファンに伝えることができることも忘れてはならないと思う。
たとえば、2月19日に両国国技館で行われた『ジャイアント馬場没20年追善興行』のメインイベントに出場した新日本の棚橋弘至は、自分の得意技であるスリングブレイドを放つタイミングで、ジャイアント馬場の必殺技であるランニング・ネックブリーカードロップを決め、無言のうちに、馬場へのリスペクトを表明している。
また、ケニー・オメガは2016年「G1クライマックス」決勝の後藤洋央紀戦で、プリンス・デヴィット(現フィン・ベイラー)のブラディサンデー、AJスタイルズのスタイルズクラッシュという、歴代バレットクラブのリーダー、そして歴代新日本外国人エースのフィニッシュ技を繰り出し、ファンにその意味を考えさせることで、優勝にさらに深みを持たせた。
プロレス技には歴史や物語が詰まっており、技そのものに意味がある。
大事なのは、先人の技を使うことに対する是非ではなく、意味ある使い方をするかどうかにあると思うのだ。