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野村直矢のエルボーに「三沢」を見た。
吹っ切れた25歳に抱く、全日の未来。
posted2019/04/05 17:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
全日本プロレスの「チャンピオン・カーニバル」が4月4日、後楽園ホールで開幕した(優勝決定戦は4月29日、後楽園ホール)が、このシリーズで気になる男がいる。
野村直矢、25歳。
ちょっと前までは、はっきり言って「ああ、野村か」くらいの印象だったが、私の中での評価はあの時を境に一変した。
3月19日、野村は宮原健斗の三冠ヘビー級王座に挑戦した。もし勝てば、最年少三冠王者という肩書が待っていた。でも私の中で「勝てないだろうな」という印象が先行していた。だが、試合が進むと「もしかしたら勝てるんじゃないか」と思うようになってきた。
野村が繰り出したエルボーには三沢光晴を感じた。確かにあのズシーンと鈍い音を立てる三沢ほどの重みはない。でも、左右の連打も含めて気迫がにじみ出たエルボーだった。ふと三沢のヒジを思い出してしまった。
試合後、水道橋の居酒屋で友人らとビールを飲んでいたら、その話が出た。その試合を裁いた和田京平レフェリーも、その野村のエルボーに「あれ、三沢だよね」と語っていたという。
野村はフィニッシュホールドに三沢ワザであるエメラルドフロウジョンの変形を使ってきたが、本人の口から「ミサワ」という言葉を聞いた記憶はない。
「受けてみた」全日の入門テスト。
金沢市出身の野村がプロレスと出会ったのは幼い頃だった。プロレスが好きだった父親の影響でビデオやテレビでプロレスを見て育ったという。長州力や小橋建太の格好の良さに特別の憧れを抱いたという。
野村は中学生の時、地元の金沢で夏休みに初めて生でプロレスを見た。全日本プロレスだった。
そんな野村は大学に進学していたが、行き詰まりを感じて、2013年に全日本プロレスの入門テストを受けた。「受けてみた」という方が正しいのかもしれない。不出来だったと感じたが、当時の全日本プロレスはレスラーの離脱で「人手不足」だったためか、合格になった。