サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
昌子源が代表の戦術を進化させる。
「いろんな方法があると思うんです」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/03/25 12:00
吉田麻也が不在の状況では、昌子源こそがディフェンスリーダーである。影響力は急速に大きくなっている。
代表のスタメンを掴むまでの時間の重さ。
試合に勝てなかったという結果も大きいが、試合後の昌子からは代表復帰という大きな達成感よりも、課題や反省点など足元を見つめる慎重さが感じられた。
W杯ロシア大会経験者として、チームに何かをもたらしたい、自身の存在をアピールしたいという欲があったに違いない。次のW杯へ向けた競争のなかに身を投じた、最初の試合だったのだから。
快勝はならなかったし、彼個人としても満足できるプレーではなかったはずだ。新チームでの戸惑いもあっただろうし、多少の気負いがあっても不思議ではない。
それでも、焦りや落胆の色はなかった。
「招集されてすぐに試合に出られた(安西)幸輝はうらやましいですよ。俺やナオ(植田直通)なんて、試合に出るまで3年くらいかかりましたから(笑)」
元チームメイトの代表デビューについて語った昌子の言葉からは、代表の一員として待機し続けた日々の重さが伝わってくる。
日産スタジアムでの代表戦は、昨年のW杯前のガーナ戦以来だが、その試合で昌子は試合に出ていない。しかしその後のW杯で先発ポジションを手にし、ACLでアジア王者に輝き、フランスへ移籍した。現在の自分は、1年前には想像もできなかったはずだ。
「なにが起こるかわからないですね」
素っ気なくそう言って軽く笑う昌子。ここから始まる代表内の競争でも、なにが起こるかわからない。一喜一憂するのではなく、着実に争いに挑み歩んでいく。そういうしぶとさと粘り強さもまた昌子源の武器なのかもしれない。