サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
新キャプテン・吉田麻也の存在感。
「僕は長谷部誠にはなれない」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO
posted2019/01/21 11:20
大会前の公式会見で森保一監督とともに登壇した吉田。司会からの英語の質問に流暢な英語で答えた。
総論と各論を相手によって使い分け。
2022年のカタールW杯でベスト16の壁を打ち破り、世界の8強、4強へと日本サッカーを押し上げていくために、今回のアジア杯は極めて重要な大会だ。
主将という立場になると、ときにチーム全体を俯瞰することに意識が傾き、自分のプレーへのフォーカスが足りなくなるという声を聞くこともあるが、「僕自身、元から周りを見るタイプだと思うので気にならない」と語る吉田にその心配は無用だ。それは、大会の流れの中で、若手にも自分にも言葉を向けている姿からも明らかだ。
若手に対しては、「このプレッシャーの中で戦えるようにならないと、アジア予選でも、W杯でも、選手個々のキャリアとしても戦っていけなくなる。このプレッシャーに勝たないと次のステップは踏めない」と激励する。
そして自身に対しては、「キャプテンを任されている中で、結果で示したい。僕個人にとっても、チームにとっても、協会にとっても重要な大会。それくらいの覚悟を持ってこないと優勝できない」と重しを負わせる。
一方で、オマーン戦でセンターバックでコンビを組んだ最年少20歳の冨安健洋には、自ら用意したオマーンのクロスの映像をタブレットで見せ、「このシーンは、相手の質が良かったらやられている」と具体例を示して注意を促した。
メディアには思い描く代表の骨格を総論で伝え、選手に対しては各論からエッセンスを抽出させるようなアプローチをする。森と木を巧みに使い分けている。
“吉田麻也の代”の使命は大きい。
UAEの首都アブダビで始まった日本の戦いは、内陸のアル・アインを経て、次はペルシャ湾に面したサルージャへと舞台を移す。メディアの移動手段の中心であるタクシーのドライバーはほとんどが外国人労働者。インド、パキスタン、シエラレオネ、エチオピアなどから来た出稼ぎ運転手たちと話すと、彼らは総じてサッカーに詳しく、何度も「日本はアジアのベストチーム。なぜならW杯に毎回出ている。上位にも進出している」と言われた。
グループリーグを1位で突破した日本は順調にいけば1月28日の準決勝で再びアル・アインに戻る。次のスタジアムは'17年3月のUAE戦と同じハッザ・ビン・ザイードスタジアム。吉田が初めて日本代表のキャプテンマークを巻いた地である。
世界での評価や地位を向上していくために、アジア杯のタイトルは不可欠であり、“吉田麻也の代”の日本代表に与えられている使命は大きい。今見えているのは、吉田なら必ず日本を束ねていけるという信頼。思い出の地であるUAEで輝かしいスタートを切ることを願う。