錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭の最終セットは「世界一」。
BIG4級の精神力を示す数字と歴史。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byAFLO
posted2019/01/18 12:30
2試合連続で難敵との接戦を切り抜けた錦織圭。フルセット神話は健在だ。
奇跡のような再逆転劇の末の勝利。
カルロビッチ戦でも2つのタイブレーク、そしてファイナルセットを制し、このデータを裏付けた。
ブレークポイントをセーブしたのは5回中3回と決して高い数字ではないが、数字よりも印象で勝るシーンだった。
最終セット、4オールのサービスゲームで直面した0-40の大ピンチ。そこまでに26ゲームあったカルロビッチのサービスゲームを1度しかブレークできなかったことを考えれば、トリプル・マッチポイントに等しい場面だった。しかしここから3本連続でファーストサーブを入れ、ラリーを制してデュースに戻すと、さらに2ポイントを重ねてキープに成功。ここをしのいだのが最大の山場だった。
マッチタイブレークでも4-1のリードを覆されたが、6-7から2本連続のミニブレークという奇跡のような再逆転で勝利の糸をたぐり寄せた。
「5セットマッチ」の過酷な歴史。
先ほど紹介した「プレッシャーのかかる場面での強さ」の項目の中でも錦織が突出しているのは、最終セットの勝率だ。
キャリアを通して76.5%という数字は歴代トップを誇る。
錦織にとって5セットマッチの歴史の始まりは、グランドスラムではなくデビスカップだった。
2008年、センセーショナルだったデルレイビーチでのツアー初優勝後、まだ18歳だった錦織は日本のトップランカーに躍り出て、デビスカップのアジア・オセアニアゾーン2回戦の代表に選出された。
デ杯初出場がいきなりエースという立場で、しかも敵地インドでの戦いだった。
6-7(2) 、6-3、 4-6、 6-2、 3-6。
タイブレークに敗れ、ファイナルセットに敗れた。