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錦織圭の逆転勝利は必然だった。
「この10年の経験値が僕の武器」
posted2019/01/16 17:30
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Getty Images
錦織圭が全豪オープン1回戦敗退の危機をなんとか脱した。予選から勝ち上がった世界ランキング176位、カミル・マイクシャク(ポーランド)に大苦戦。第2セットのタイブレークを落とし2セットダウンとなったが、第3セット序盤に相手がケイレンを起こし、体の自由が利かなくなった。
その後しばらくは、悪化を恐れ、打たず走らずの状態となり、錦織が第3、第4セットを連取。第5セット、錦織が3-0としたところで相手が棄権、崖っぷちから這い上がり、勝ちを拾った。
マイクシャクは普段、下部ツアーを中心に回る選手だが、ここでは時速200kmを超えるサーブ、直線的な弾道の高速ストロークなど、高いポテンシャルを披露した。辛勝の錦織は「内容的には、トップ50、30にいてもおかしくないくらいのテニス」と称えた。
予選3試合を戦い、コートの球足の速さやボールの特徴に慣れていたこと、失うものはないと全力で第8シードの錦織に挑んだことも大きかった。錦織は「自分のプレーが彼に合っていた」と苦戦の原因を分析した。錦織の特徴であるプレースピードの速さが逆にあだとなり、相手にとって特徴を出しやすい速いテンポのラリーが続いたのだ。
フルスロットル以外に勝機はなかった。
マイクシャクとは初対戦で、情報も少なかった。普段はコーチ陣との事前のミーティングと試合中の情報収集で攻略法を見つけるのだが、この試合に限ってはなかなか答が出せなかった。
「バックハンドのダウン・ザ・ラインやディフェンスも良かったので、崩し方が最後まで分からなかった」
錦織は苦い表情で振り返った。あらゆる条件がマイクシャクに有利に作用し、23歳の一世一代とも言えるようなプレーを引き出したと見ていい。
故障は不運だったが、ケイレンによる棄権は体力負けと評価される。最初の2セットのラリーはどれも激しかったが、彼にはフルスロットルでプレーする以外に勝機はなく、必然的にガス欠を起こしたのだ。