テニスPRESSBACK NUMBER
大坂なおみとセリーナは再会するか。
誰もが納得する「決着」を全豪で。
posted2019/01/18 17:30
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph by
AFLO
歴史に名を残す人物にはいつも、その起点となるべき始まりの物語や、印象的なエピソードが付随する。
もっとも人見知りで言葉数の少ない少女が、自分の原点を華美に飾ることを好むはずはない。ただその彼女が、なぜセリーナ・ウィリアムズに激しく憧れたかについて、16歳の時に明かしてくれたことがある。
2001年――米国カリフォルニア州のインディアンウェルズで開催された大会の準決勝で、セリーナは姉のビーナスと対戦するはずだった。だがビーナスは直前になり、ケガを理由に試合を棄権。すると楽しみを奪われた観客は、翌日の決勝の舞台に立つセリーナに、悪意に満ちたブーイングを浴びせかけたのだ。
不条理極まりない負の感情を浴びながら、それでもセリーナは試合を制すると、父親の胸に飛び込み、激しく肩を震わせた……。
大坂なおみがその様子を映像で見たのは、リアルタイムではなく、数年後のことである。折しも自身が、対戦相手の友人や親族から心無い言葉を浴びせかけられ、酷く落ち込む敗戦を喫した後だったという。
「この人のようになりたい!」
落ち込む少女の胸に、セリーナの姿が深く深く刻み込まれる。
小学校3年生時には、自由研究テーマにセリーナを選び、かの人が活躍する姿をカラフルなペンで彩った。
この時こそが、大坂なおみが歩みを進める、“ポスト・セリーナ”の道の始点である。
セリーナに繋がる人脈の糸。
憧れの人に向けられた無垢なる思慕は、大坂自身が成長しテニス界で頭角を現すにつれ、次々にセリーナに繋がる人脈の糸を手繰り寄せた。
運命の輪が大きく回りだしたのは、2014年のスタンフォード大会。当時、世界的には全くの無名選手だった16歳の少女は、予選を勝ち上がりWTAツアーデビューを果たすと、初戦で世界19位のサマンサ・ストーサーを破り、一躍大会の注目選手となる。