錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭の最終セットは「世界一」。
BIG4級の精神力を示す数字と歴史。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byAFLO
posted2019/01/18 12:30
2試合連続で難敵との接戦を切り抜けた錦織圭。フルセット神話は健在だ。
「かわいそうっていうか、悔しさとか」
重荷やプレッシャーという点にまつわり、今大会の開幕前、引退を示唆したマレーについての質問の中で錦織はこうコメントしている。
「グランドスラムを持ってるイギリスのプレッシャーとか、ファンのテニスへの思いは日本よりも大きいと思います。でも、そうですね、自分も近いものは感じていました。
すごく努力家でもあったし、かわいそうっていうか、悔しさとか、いろんな気持ちがあります」
マレーが2013年のウィンブルドンでイギリス人として77年ぶりの男子シングルス・チャンピオンとなったことは、後世にいつまでも語り継がれる伝説のひとつだろう。
日本には確かにグランドスラムもマスターズもないが、チケットの売れ行きもスポンサー収入も全て錦織の肩にかかっている状況が続いてきた。テニスへの人々の思いは『イギリス>日本』かもしれないが、たとえばテニスへの理解の乏しいマスコミや人々が巻き起こすフィーバーの中で、マレーとは異質の葛藤もあったはずだ。
2014年、全米オープンで準優勝して日本中が大フィーバーとなった中での楽天ジャパンオープン、優勝した錦織は勝って初めて泣いた。
世界一のものが何か1つでもあれば……。
前哨戦のブリスベンで約3年ぶりのツアー優勝を果たした錦織への日本の期待は、また大いに高まっている。
グランドスラムで8つのタイトルを手にした元王者のアンドレ・アガシが、昔こんなことを言っていた。
「サーブでもレシーブでもボレーでも、そのほか何でもいい。世界一のものを何か1つでも持っていれば、グランドスラムで優勝できるチャンスがある」
錦織は〈一番〉を持っている。