錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭の最終セットは「世界一」。
BIG4級の精神力を示す数字と歴史。
posted2019/01/18 12:30
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
AFLO
地面に両膝を落とし、両手を前につき、しばらく動けなかった。
「負けるタイミングが2、3回あった。そこから挽回して、気持ちを切らさず最後までプレーできたのがうれしかった」
全豪オープンテニス、2回戦。211cmというツアー1の長身を持つイボ・カルロビッチとの3時間48分の戦いは、我慢とか気力とかそんな言葉では表しきれないほどの神経戦だった。
2セットを先取してから2セットを奪い返される展開。息詰まるファイナルセットは両者のサービスキープが続く。
相手はテニス史上1、2を争うビッグサーバーだ。チャンスであれピンチであれ、ほかの試合とはまったく重さが違う。このチャンスを逃せば二度と訪れないかもしれない。このピンチをしのげなければ負けたも同然……。
「博打のような試合」と錦織はたとえたが、最終的に59本に達したサービスエースを容赦なく浴びながら、そして高まり続けるプレッシャーにさらされながら、勝負強さが究極に試される10ポイント・マッチタイブレークに突入した……。
“プレッシャーに強い”錦織の証拠。
ATPの公式サイトに、〈プレッシャーのかかる場面での強さ〉を数字で表したランキングがある。
ブレークポイントでの成功確率、ブレークポイントのセーブ率、タイブレークの勝率、ファイナルセットでの勝率という項目で弾き出した数字によるものだ。
全ての項目を総合したランキングで錦織は歴代4位。
上の3人はノバク・ジョコビッチ、ピート・サンプラス、ラファエル・ナダルで、すぐ下にいるのがロジャー・フェデラーとアンディ・マレーである。昨年に限ればトップ。
〈精神力〉や〈勝負強さ〉を数字で表したともいえるこのデータで、錦織はグランドスラム・タイトルを複数持つカリスマ、レジェンドたちと互角かそれ以上のものを放っているのだ。