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「最強」の青学が箱根で負けた理由。
東洋、東海が全てをかけた4区勝負。
posted2019/01/09 08:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Yuki Suenaga
青山学院大は、最強だった。
しかし、負けた。
久しぶりに箱根駅伝の厳しさを垣間見た思いがする。
「敗軍の将」となった原晋監督は悔しさをにじませながら、話した。
「地力はあるんです。そうじゃないと、復路であんなに追い上げることは出来ませんから。でも、私の采配ミスで負けました」
焦点は青学大の4区のブレーキである。
しかし、原監督の采配を「悪手」に転じさせたのは東洋大の酒井俊幸監督だった。東洋大は限られた“資源”を往路に惜しみなく投入し、青学大をパニックに陥れることに成功した。
酒井監督は、どんな駅伝でも必ず一度は“見せ場”を作る。レース序盤に主導権を握り、「先行者利益」を確立してから逃げ切りを図る。
今回は1区・西山和弥(2年)、2区・山本修二(4年)、3区・吉川洋次(2年)、4区・相澤晃(3年)と、主力の4人を往路に惜しみなくつぎ込んだのは、往路優勝を是が非でも勝ち取るという意志の表れであり、往路だけに特化した「片道切符」でもあった。
しかし、この捨て身の戦略が青学大を潰した。
相澤に「名前負け」した可能性。
青学大の関係者の推測では、4区の岩見秀哉(2年)は追ってくるのが相澤でなければ、実力を発揮できていたかもしれないという。相澤は高校時代から全国的に名を馳せ、前回の箱根では2区で区間3位、今季の全日本では最長区間である8区で区間賞を取っている。西山と並ぶ、東洋大の「顔」だ。
岩見は相澤に対し、「名前負け」した可能性がある。
追いつかれ、抜かれ、対応できず離されていくと、東海大の館澤亨次(3年)にまで抜かれてしまった。東海大と並走できていればまた違った展開が待っていただろうが、原監督にも打つ手はなかった。
そして原監督が自信を持っていた山上りの5区では、竹石尚人(3年)が区間13位と追い上げることが出来ず、先頭の東洋大が芦ノ湖にゴールしてから5分半もの大差がついていた。
東洋大の捨て身の作戦が功を奏し、東海大もその分け前にあずかる格好になったのである。