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「最強」の青学が箱根で負けた理由。
東洋、東海が全てをかけた4区勝負。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byYuki Suenaga
posted2019/01/09 08:00
東海大の復路もまた、往路に負けないほど高いパフォーマンスだった。新時代の幕開けだ。
往路で札を使い切った東洋に対して……。
ところが、東洋大は往路で札を使い切ってしまったがために、復路で青学大、東海大に対抗できる戦力を取っておくことが出来なかった。酒井監督はいう。
「1枚、足りませんでした。本来であれば、昨年7区を区間3位で走った渡辺奏太(3年)を同じ区間で起用できれば、キャプテンの小笹椋(4年)を9区か10区で使うことも出来たはずで、そうなればもっと違った展開が待っていたはずなんですが」
そこで浮上してきたのが、東海大だった。
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今季、東海大が着実に力をつけて箱根仕様にモデルチェンジしているサインを、私は見落としていた。
連覇を狙った出雲駅伝で敗れたことで、評価を下げた。しかし、ここに伏線があったように思える。
11月にじっくり仕込んだ“箱根仕様”。
今季、両角速監督はトラックシーズンが終わってからは走り込みを重視。10月の時点では長い距離へと転換している途上であり、出雲での決め手に欠けていた。
出雲で敗れたのだから、全日本はさらに苦戦するだろうと思われたが、ここで良化の気配を見せた。2区・關颯人(3年)で先頭に立つと、7区の中盤まで先頭に立ち、青学大に次いで2位に入った。
取材する側とすれば、東海大の全日本の内容をより吟味するべきだったが、鮮やかな逆転劇を演じた青学大に目を奪われてしまった。
例年であれば、11月の期間に東海大の選手たちは各種記録会に出場し、10000mのスピードアップを図る。しかし、今季は不気味なほど静かで、この時期にたっぷりと走り込みを行い、箱根仕様の足回りを作り込んだ。
そして、箱根では配置がハマった。
特筆すべきは、両角監督が2区に湯沢舜(4年)を起用したことだ。出雲、全日本ともに最長の最終区を任され、両角監督が信頼していることがうかがえたが、箱根も同様にアンカーを任されると思われていた。しかし両角監督は、
「2区は4年間、地道に練習を積み重ねてきた湯沢で行く」
と決断した。