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栗山英樹監督は観察し、信頼する。
日本ハム8年目も未来を見据えて。
posted2019/01/02 11:30
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Kyodo News
プロスポーツは結果がすべてである。エンタテインメントの側面から見ても、勝利は欠かせない。どれほど相手を攻めたてても、残塁が積み上がる攻撃は観衆のため息を誘うものだ。
2018年の北海道日本ハムファイターズは、レギュラーシーズンを3位で終えた。大谷翔平をメジャーリーグへ送り出し、クローザーの増井浩俊がオリックス・バファローズへ移籍しながら、前年のレギュラーシーズン5位から順位をあげたのである。
「翔平がいなくなったから勝てないとは言わせない」という思いを胸に刻んでいた選手たちにすれば、満足できる結果ではないかもしれない。それでも、クライマックスシリーズ進出が前評判を覆すものだったのは間違いなく、チームが手にしたものはあったシーズンと言えるはずだ。
'18年シーズンを迎えるにあたって、栗山英樹監督は「去稚心」をキーワードのひとつに掲げた。江戸時代末期の志士にして思想家の橋本左内が説いた「幼さを消す」ことを野球に置き換え、自らに「私利私欲や私心に左右されずにチームを率いる」ことを課し、選手たちには「チームの勝利から逆算した行動」を求めた。
選手の自主性をとことん尊重。
たとえば、移動日に練習をするのかどうかは選手自身の判断に委ねられる。身体を動かしても、休養に充ててもいい。コンディションは選手によって様々であり、翌日以降の試合でベストのパフォーマンスを発揮することを前提に自分で考えてほしい、というのが栗山監督の意図だ。
選手たちをルールや罰則で縛ることもない。遅刻などに対して罰金制度を設けたら、お金を払うことが許されることとイコールになりかねない。高額の罰金を科せられたことがメディアで報道されれば、プロ野球選手が想起させる豪放磊落さのトピックスとして一般に伝わってしまうこともある。
プロ野球選手も人間だ。集合時間に遅れてしまうといったように、チーム内の決まりごとを破ってしまうことがあるかもしれない。そこで大切なのは、同じ過ちを繰り返さないことにある。そのためにも罰金などで表面的に整理するのではなく、本人の心に問うことを先決とするのだ。