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栗山英樹監督は観察し、信頼する。
日本ハム8年目も未来を見据えて。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKyodo News
posted2019/01/02 11:30
栗山英樹監督率いる日本ハムからは数多くの才能が生まれ、そして旅立っていった。次に花開くのは誰か。
「オレは信じている」と語りかける。
そのうえで、結果に対する責任は監督自身が背負う。先発投手が試合を作れなくても、打者が好機に凡退しても、選手を責めることはない。「選手が力を出せるような働きかけができていない」として、自らのマネジメントを問う。「できるまでやらせる。オレは信じている」と選手に語りかけ、成長を促していくのだ。
果たして'18年シーズンは、上沢直之が自己最多にしてチーム最多の11勝をあげた。プロ4年目の石川直也は、増井に代わる新守護神として19セーブをマークした。
野手では5年目の渡邉諒が、シーズン中盤からセカンドのポジションをつかんだ。栗山監督は二軍落ちを経験させながらも、辛抱強い起用で才能を芽吹かせた。
栗山監督らしい選手起用としては、大田泰示の2番起用があげられる。移籍1年目の17年に15本塁打を記録し、'18年も14のアーチをかけたパワーヒッターは、一般的なセオリーならクリーンアップかその後ろに組み込まれるタイプである。その太田を2番で起用するのは、「既成概念に引っ張られない」栗山監督ならではの采配だ。
大谷翔平と入れ替わりで入団した清宮幸太郎は、シーズンを通して一軍に定着することはできなかった。それでも一軍で7本塁打、ファームでは17本塁打を記録し、非凡な才能を見せつけた。
天真爛漫なゴールデンルーキーは、ともすれば年上のチームメイトから厳しい視線を向けられがちだ。栗山監督は清宮と彼に接する選手たちを注意深く観察し、19歳の才能を温かくも厳しいスタンスで育んでいったのだろう。
勝利のために時には非情に。
チームの勝利を最優先としながら、アメとムチは使い分ける。その分かりやすいケースが、4月7日のロッテ戦だった。
シーズン初登板となった斎藤佑樹を、4回途中でマウンドから降ろしたのだ。チームは6対1でリードしており、齋藤は1本のヒットも許していなかった。ところが、初回から制球が定まらず、8四死球を与えていた。
斎藤に前年5月以来の勝利を飾って欲しい気持ちは、他でもない栗山監督も強かったはずである。しかし、ひとりの選手の利益を尊重する判断は許されない。斎藤なら分かってくれる、この悔しさを糧にしてくれる、との思いから、ピッチャー交代を告げたのだった。