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スポーツ業界は“物好き”頼みに終止符を。
並木裕太が考えた経営人材活用法とは?
posted2019/01/08 07:00
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
Getty Images
成熟期を迎えたと言われる日本にあって、「スポーツ」は貴重な成長分野の1つに数えられる。スポーツビジネスという言葉が当たり前に聞かれるようになり、その商業的なポテンシャルに対する視線は着実に熱を帯びつつある。
では、ビジネスとしてのスポーツが発展し、市場を拡大させていくためには何が必要なのか。
答えは1つに限らないが、「仕事ができる人材にたくさん入ってきてもらう」ことは、シンプルかつ確実な方策だろう。
ひとまず、プロ野球の球団やJリーグのクラブを想定しよう。個々の組織は決して大きくない。それは言い換えれば、「1人」がもたらしうるインパクトが大きいことを意味する。経営手腕に秀でた「個」の加入で景色が一変する可能性は十分にあるのだ。
ただ問題は、「仕事ができる人材」の給料は高く、いまだ発展途上のスポーツ業界が用意できる給与水準との間にギャップがあることだ。地方を拠点としていればなおさら、その差異は大きくなりやすい。
スポーツは好きだけど就職までは……。
経営コンサルタントで、スポーツ領域の案件も多数手がけてきた並木裕太は言う。
「コンサルティングファームや金融業界、商社などでビジネススキルを鍛え、スポーツ業界を新たな職場にしたいという意欲を持っている若者に接する機会は多い。しかしその多くが二の足を踏んでいます。
収入面などの不安を振り払って飛び込むのは、『スポーツが大好き!』という強い情熱を持ったひと握りの人材で、周囲からは“物好きなヤツ”と言われてしまう。
スポーツ業界の経営人材確保は、そうした“物好き”の登場を期待して待ち受けるような状況が続いてきました」
ビジネスが育ち、利益を伸ばすことができれば、人材への投資額を増やすことができる。経営人材が加われば、ビジネスが育ち、利益を伸ばすチャンスが広がる。
これは本来、正の循環を成すはずだが、組織(雇用元)と個人(働き手)がともに最初の一歩を踏み出せずにいては、そもそも回転がスタートしない。
つまり「鶏が先か、卵が先か」の問題なのだ。