マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
安倍昌彦が考える2018ベストゲーム。
根尾、辰己、小園が輝いたあの1戦。
posted2018/12/31 09:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
いよいよ暮れも押し迫って、「2019年」がもうすぐそこまでやってきている。
野球の世界はシーズンオフを迎え、今年はどうだったかな、と振り返りの季節でもある。
今年もプロ、アマチュア、たくさんの試合を見てきたものだ。分厚くファイルされたスコアシートを手にするたびに、「1年の重さ」をひしと感じる。
別に“数”を自慢するほうでもないので、しばらく経ってからスコアシートを見直し、ああ、そういう試合だったよね……と思い出せるような「見方」ができていれば、中身のある観戦取材だったのだろうと考えている。
中に1年に1つ2つ、この試合もう一度見たいなぁ……と思わせてくれるような試合がある。それが私にとって、その年の「ベストゲーム」ということになる。
今年なら、いの一番に挙げるのが、「U18アジア選手権」に出場する高校ジャパン代表が、大学日本代表の胸を借りた「壮行試合」。夏の甲子園が幕を閉じた直後、8月28日に神宮球場で行われた。
練習試合らしからぬ重たい空気。
試合前の練習から見なければ……と3時頃に球場に着いたら、開始は夕方5時45分のはずなのに、もうネット裏があらかた埋まっていて驚いた。ファンの作る行列がすごいので、開門時間を1時間ほど早くしたと聞いた。
思い出したのは、清宮幸太郎(現・日本ハム)が早稲田実業3年の夏のことだ。
「西東京」の予選を勝ち上がって、神宮球場で行われた準決勝。決勝戦では席もないだろうと1つ前に行ったのに、試合開始1時間前で内野はギッシリ。外野ギリギリの場所に、なんとか1席見つけて潜り込んだのを思い出した。
壮行試合とは、つまり「練習試合」である。
なのに、このドロリとした空気はなんだ。選手たちも真剣勝負だったろうが、むしろ見守る者たちのほうに異様な“気合い”のようなものを感じて、試合前からジットリにじんでくる汗は、決して湿度80%クラスの残暑のせいだけではなかった。