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箱根駅伝の達人・碓井哲雄が語る、
青学優勝をはばむ3条件とは?
text by
碓井哲雄Tetsuo Usui
photograph byTakuya Sugiyama
posted2018/12/26 07:30
2017年、往路復路ともに制しての完全優勝および3連覇達成、さらに出雲駅伝、全日本大学駅伝も含めた「大学駅伝三冠」も達成した青山学院大学。
<条件3>5区の山上りでリードを守る。
そして青山学院を破るための3番目の条件が、山上りの5区で差をつけておくことです。
5区の山上りは昔から特殊な区間とされてきました。選手に求められるのは強い精神力です。 しっかり走ればタイム差は開きませんが、すこしでもダメだと思ったら、すぐにタイムに表れる。そういうメンタル面でも過酷な区間なのです。
この5区で、できれば1分ほどの差をつけたい。1分のタイム差を平地での距離になおすと約300m。1分以上、離れると肉眼では見えにくくなる。そうなると選手は不安になり、走りに影響が出るものです。
30秒ほどのタイム差なら、復路で青山学院に追いつかれてしまうでしょう。でも1分の差があると、さしもの青山学院でも簡単には追いつけません。
私が注目しているのは東海大の館澤亨次選手です。1500mで日本選手権に優勝し、アジア大会に出場した中距離の選手ですが、彼は1年生のとき5区に起用されています。このときは13位でしたが、経験があるのは大きい。東海大・両角速監督がどこで彼を起用するのか興味深いところです。
青山学院・原監督との奇妙な一致。
往路で差をつければ、復路はその勢いで選手は走ることができます。往路が好成績だと、復路を走る選手は夜、よく寝られるんですよ。逆に差をつけられたチームは、「キツいなあ」と、なかなか寝られない。往路が悪いと、どうしても悪循環に陥ってしまうものです。
このように往路で勝負をかける戦略ですが、じつは今年、東洋大が採っています。エースの山本修二選手を補欠に隠し、当日変更で3区の青山学院、田村和希君にぶつけた。その結果が往路優勝です。
このときは36秒差だったので、6区で青山学院に抜かれ、総合優勝はできませんでした。とはいえ東洋大の酒井俊幸監督は、レースの前に、「往路では勝つかもしれませんが、復路では勝てない」と、私に話しています。力の差を冷静に分析して今年にかけている。