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箱根駅伝の達人・碓井哲雄が語る、
青学優勝をはばむ3条件とは?
text by
碓井哲雄Tetsuo Usui
photograph byTakuya Sugiyama
posted2018/12/26 07:30
2017年、往路復路ともに制しての完全優勝および3連覇達成、さらに出雲駅伝、全日本大学駅伝も含めた「大学駅伝三冠」も達成した青山学院大学。
<条件その1>1区で外国人選手が飛びだす。
この青山学院に勝つことのできるチームはどこか。はっきりいって東海大と東洋大です。それに駒澤大がからむ可能性はありますが。
とはいえ、残念ながら東海大と東洋大が自力で波乱を起こすのは難しい。他のチーム、選手のお膳立てが必要です。この「お膳立て」とはなにか。それは1区で外国人選手が飛び出すことです。
日本大のパトリック・ワンブィ選手、山梨学院大のドミニク・ニャイロ選手、拓殖大のワークナー・デレセ選手といった力のある外国人選手が固まって飛びだすと、日本人選手ではついていけません。これが波乱の起きる第一条件です。
1区が日本人選手だけだと、いわゆるダンゴ状態になりがちです。すると集団のペースが出来あがり、そこから抜け出すのが難しくなる。本来の力の差が出ないわけです。そこが全員が一斉にスタートする1区、集団走の怖さです。
しかし力のある外国人選手であれば、日本人選手の集団から抜け出すことができます。彼らが青山学院に1分以上、できれば2分の差をつけて、2区にタスキをつなぐ。こうなれば期待がもてます。
ところが、なにを忖度しているのか、こうした外国人選手を1区に起用せず、2区に配するチームが多い。これでは宝の持ち腐れです。下位でタスキを受け取っても、せいぜい、何人抜いたとか、区間最高タイムといった話題を提供するだけ。勝負にはまったく影響しません。強い外国人選手のいるチームは勝負に徹してもらいたいものです。
<条件2>2区で青山学院のペースが崩れる。
では、1区で青山学院とトップの差が1~2分になれば何が起こるのか。青山学院の2区のランナーに焦りが生じ、オーバーペースになる可能性がある。そこにつけ込むスキが出てくるのです。
逆に青山学院のペースが落ちる可能性もあります。駅伝では、ひとつの区間で30秒以内というのが目安で、それ以上に差が開くと、選手は「やられた」という気持ちになるものです。そうなると、本来の力がでないのですね。
ただし、先ほど挙げた有力な外国人選手のいるチームは、失礼ながら優勝を狙う戦力が整っていません。だから徐々に順位は落ちていく。だから2区の段階で、東海、東洋の選手は、先頭か、少なくとも青山学院に先行していなければいけません。
それが波乱の条件その2です。