酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
規定投球回数はもう時代遅れ?
12球団で到達者はたったの17人。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2018/12/05 17:00
2年連続の沢村賞に選出された菅野智之。PR指標で見てもやはり巨人のエースたる数字を残した。
両リーグのトップ10は……。
2018年のPR10傑は以下の通り。
<パ・リーグ:平均防御率3.90>
1岸孝之(楽)20.85(防御率2.72/159回)
2菊池雄星(西)14.91(防御率3.08/163.2回)
3上沢直之(日)13.59(防御率3.16/165.1回)
4青山浩二(楽)11.09(防御率1.85/48.2回)
5ボルシンガー(ロ)10.98(防御率3.06/117.2回)
6ミランダ(ソ)10.65(防御率1.89/47.2回)
7宮西尚生(日)10.50(防御率1.80/45回)
8アルバース(オ)10.39(防御率3.08/114回)
9公文克彦(日)10.38(防御率2.17/54回)
10増井浩俊(オ)10.18(防御率2.49/65回)
<セ・リーグ:平均防御率4.10>
1菅野智之(巨)43.99(防御率2.14/202回)
2大瀬良大地(広)29.93(防御率2.62/182回)
3東克樹(De)28.23(防御率2.45/154回)
4メルセデス(巨)20.96(防御率2.05/92回)
5ガルシア(中)20.80(防御率2.99/168.2回)
6フランスア(広)17.62(防御率1.66/65回)
7石山泰稚(ヤ)16.53(防御率2.08/73.2回)
8小川泰弘(ヤ)16.20(防御率2.75/108回)
9ジョンソン(広)15.91(防御率3.11/144.2回)
10原樹理(ヤ)12.42(防御率3.09/110.2回)
PRの良いところは、規定投球回数にとらわれず同一リーグのすべての投手を比較できることだ。両リーグともに先発投手に交じって、救援投手の名前も上位に来る。トータルでの投手の貢献度を見ることができるのだ。
菅野の数値は岸の倍以上。
また、投手の傑出度もはっきりわかる。今年の沢村賞投手である菅野智之のPR43.99は、パのPR1位・岸孝之の20.85の倍以上だ。今季の活躍がどれだけすごかったかがわかる。
防御率をベースにして投手を比較するのなら、PRに切り替えるというのも1つの案だと思うがいかがか?
近年、記録の専門家は、そもそも「防御率」は、投手の実力を測る指標としては最適ではない、と言いだしている。自責点には多分に「運」の要素が含まれていて、投手の真の実力からは程遠いのだという。だから最近のセイバー系の専門家は「防御率」を無視するようになっている。
しかし「運・不運」も野球の魅力の内である。その要素も加味された防御率は、誠に人間臭くて良いと思う。「防御率」は「打率」とともに、「野球記録の始祖」と言われるヘンリー・チャドウィックが19世紀半ばに考案し、以後連綿と計算され続けてきた。その歴史を受け継ぐためにもPRを活用してはどうか、と思う次第だ。