酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
規定投球回数はもう時代遅れ?
12球団で到達者はたったの17人。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2018/12/05 17:00
2年連続の沢村賞に選出された菅野智之。PR指標で見てもやはり巨人のエースたる数字を残した。
完投数が'09年から半減。
もう1つ言えば、ローテーションの間隔が広くなっていることがある。昔、トミー・ジョン手術明けの村田兆治が、毎日曜ごとに登板した時には「サンデー兆治」と呼ばれた。他の投手よりも広い登板間隔が珍しかったからだ。しかし今の先発投手は、ほぼ全員が週に1回しか投げない。全員が「サンデー○○」「チューズデー●●」「ウェンズデー××」なのだ。
7日に1回しか投げないとなると、半年のペナントレースでの登板数は25~6回になる。
その上に、今は先発完投が重視されなくなった。2009年、リーグの完投数は172(セ66、パ106)だったが、今年は85(セ43、パ42)と半減した。
これに代わる新たな指標として、QS(Quality Start)が注目されている。MLBから来たものだが「6回を投げて自責点3が先発投手の最低限の責任」というものだ。NPBでもこれにならって6~7回まで投げれば合格点ということになりつつある。25試合に先発して6回を投げればシーズン投球回数は150回、143回の規定投球回数に辛うじて到達する。
しかしそこまで投げられない試合もあるし、戦線離脱することもある。そうなると143回をクリアするのは難しくなるのだ。
提案したい「PR」という指標。
この10年の間に先発投手の仕事量は減ったが、その分、仕事が増えたのが中継ぎ投手だ。最後を締めるクローザーに橋渡しをするセットアッパーは、少し前まで2人程度。クローザーと合わせて主力級の救援投手は3人が一般的だった。
15年ほど前の阪神の勝利の方程式「JFK(ジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之)」がその典型だが、今の野球では各球団ともに3人以上のセットアッパーを揃えるようになった。
つまりここ10年、日本野球は大きく変質したのだ。「規定投球回数」というこれまでの物差しは、今のNPBの投手を測るにはふさわしくなくなったのだ。
ならばどうすればよいか。規定投球回数を「試合数×0.8」にするか。それもありだろうが、私はPR(Pitching Runs)という指標を提案したい。これもセイバー系の数字だ。
この指標は、「(リーグの平均防御率-その投手の防御率)×その投手の投球回数÷9」という計算式で導き出せる。
要するに、優秀な防御率で多くのイニング数を投げた投手が上位に来る指標だ。