球体とリズムBACK NUMBER
モウリーニョは、やっぱり面白い。
愛と憎しみで彩られる稀代の策士。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byUniphoto PRESS
posted2018/11/15 10:30
モウリーニョは常に観る者の心をプラスにもマイナスにも揺さぶる。稀代のエンターテイナーたる所以だ。
G・ネビルはモウリーニョを全力で支持。
ユナイテッドのOB、ギャリー・ネビルも彼を支持するひとりだ。
「ジョゼが(ユーベとの)試合後に取った行動。あれこそ、人々が彼を愛する所以だ。好まない人もいるだろうけど、私が彼とフットボールを愛する理由はそこにある。試合後には、情熱が溢れるものだから」とスカイ・スポーツのインタビューで語っている。
モウリーニョとユナイテッドにとって、あれは会心の勝利だった。65分にクリスティアーノ・ロナウドが背面からのロングフィードをダイレクトで捉えたスーパーゴールが決まった時、ユナイテッドの勝機は潰えたかに見えた。
しかしモウリーニョがその後に3枚の交代カードを切ると潮目が変わり、そのうちのひとり、フアン・マタが直接FKを沈めて同点。終了間際にはこちらも途中出場のマルアヌ・フェライニがアシュリー・ヤングのFKに競り合い、ボヌッチのオウンゴールを誘発した。
最終盤の4分間に逆転し、難しい敵地で白星を手にしたのだ。感情が爆発して当然の成り行きと結果である。モウリーニョの表現が特異だったとしても。
シティに完敗しても口はへらない。
このポルトガル人指揮官はその前のプレミアリーグ第11節ボーンマス戦でも、同じような逆転勝利を収めている。
後半のアディショナルタイムに逆転ゴールを決めたのは、途中出場のマーカス・ラッシュフォードだった。監督の采配が2試合連続で的中したことになる。
だが、ユベントス戦の4日後に行われたマンチェスター・ダービーでは1-3と敗北。アブダビの資本によりここ10年で急速に力をつけたライバル、マンチェスター・シティとの実力の違いを顕示されたような試合だった。ポゼッション率は65%対35%、シュート数は17対6、枠内シュート数は5対1、パス数は700対380と、スタッツにもそれは表れている。
ただし、そこはモウリーニョだ。次のように、反駁──あるいは強弁──を忘れなかった。
「スタッツを用いて分析するのは、フットボールを理解していない人がやることだ。私はスタッツを気にしない。私は試合中に自分が感じたことをもとに考える。悪いパフォーマンスではなかった」
むろん、この言い分にも物言いがついた。かつてプレミアで活躍した大型FWクリス・サットンは「両チームの間には巨大な差があった。それにしても一番苛立ったのは、試合後のモウリーニョの言葉だ。大きな赤ん坊のような振る舞いだ」とBBCのラジオ番組で言った。