プレミアリーグの時間BACK NUMBER
守銭奴が歴史、伝統、CLも脅かす、
強欲な欧州スーパーリーグ構想案。
posted2018/11/13 10:30
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Uniphoto press
その名も「欧州スーパーリーグ」。11月に入って『フットボール・リークス』による告発の一部として報じられた内容によると、欧州のビッグクラブ間では、自他ともに認める16組のエリートによる独自の大会を2021年から開催すべく、同月中にも合意の方向にあるという。
イングランドでも少なからず物議を醸した構想案にあるリーグ創設メンバーは、シティとユナイテッドのマンチェスター両軍と、リバプール、アーセナル、チェルシーの他、スペインからはレアル・マドリーとバルセロナ、ドイツのバイエルン、イタリアのユベントスとミラン、そしてフランスからパリ・サンジェルマンの11クラブ。
そこに、アトレティコ・マドリー(スペイン)、ドルトムント(ドイツ)、インテル、ローマ(ともにイタリア)、マルセイユ(フランス)の開催初年度「招待クラブ」が加わって開幕を迎えるとされている。
確かに、世界最高峰とされるCLの16強を思わせる「スーパー」な顔ぶれだ。しかし、何よりも超越している要素は「強欲さ」だろう。同様のリーグ創設案は、私腹を肥やすことに余念のない持てる者たちの間で、かれこれ20年ほど前から囁かれてきた。それが近年になって具体化し始めた最大の理由は、スーパーリーグで手にし得る報酬額のスケールアップに違いない。
20年間にわたって降格がない?
報道によれば、後ろ盾と言われるアメリカ人大富豪との仲介役は、プレシーズン中の『インターナショナル・チャンピオンズ・カップ』を運営する企業のCEO。その人物から提示された報酬は最大で4億5000万ポンド(約670億円)の規模に達する。「欧州の金脈」ことCLよりも「0」が1つ多い、文字通り桁違いの金額だ。
そのうえ、出場権を逃す危険性もあるCLとは違い、スーパーリーグ創設メンバーの11クラブは恩恵を受けられる。初開催から20年間、「降格」の対象にはならないという条件が草案に盛り込まれているというのだ。CL出場枠であるトップ4の座を“ビッグ6”が争っている、プレミア強豪クラブにとっては願ってもない環境だ。
そうでなくとも、名前の挙がっているイングランドの5クラブは“強欲クラブ”の代表格のようなものだ。スーパーリーグ構想の根底には、破格の放映権収入で潤うプレミアリーグにある。セリエAなど欧州大陸勢が太刀打ちするための問題解決策と言われてきた。ところが、いざ構想が現実味を帯びてみれば、欧州一の「金満リーグ」のクラブが創設メンバーの半数近くを占めているのだから、言い訳はできない。