プレミアリーグの時間BACK NUMBER
守銭奴が歴史、伝統、CLも脅かす、
強欲な欧州スーパーリーグ構想案。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byUniphoto press
posted2018/11/13 10:30
CL3連覇を成し遂げたレアル・マドリー。近い将来、彼らがCLからいなくなる可能性もあり得る?
イングランドでは「裏切り」。
当然、イングランド国内での反応は批判的だ。各紙の報道で目についた単語を挙げれば「betrayal(裏切り)」になる。
いきなり、渦中の5クラブが国内リーグから抜けるというわけではない。だが、試合数の多さを調整するため、かねてから廃止論があるリーグカップはもちろん、世界最古の大会であるFAカップでさえ、スーパーリーグ出場組は参戦を辞退しかねない。
同リーグは、CLと同じ火曜と水曜に加え、土曜開催も想定しているようだ。ゆくゆくは人気クラブが一堂に会するスーパーリーグの週末開催がメインとなり、国内リーグは平日開催に回される事態も危惧されている。
「サッカーの母国」を自負するイングランドの人々にすれば、“TVマネー”という紙幣で覆われたスパイクで、歴史と伝統に満ちた国内のピッチを踏みにじられるような心境だろう。
この構想、実際に開幕の日が訪れるのは、時間の問題のように思える。イングランドでは、今から2年半ほど前にもスーパーリーグ構想が議論された。レスターが奇跡のプレミア優勝へと首位を走っていた、2015-16シーズン終盤のこと。ロンドン中心部のドーチェスター・ホテルを舞台に、今回と同じ5クラブの経営陣とアメリカ人大富豪が密会したことを『サン』紙にすっぱ抜かれたのだ。
当時、クラブ側は“だんまり”を決め込んだ。だが、その後も秘密裏のやり取りが続いていた。マンCオーナーの顧問役とクラブCEOが交換したとされるメールの内容も、今回のリーク情報に含まれていた。そして、創設メンバー間の合意に必要な法的文書のドラフトまでも。
強豪に譲歩せざるを得ない。
スーパーリーグ開幕について、UEFAと当該国リーグ、協会は抵抗はするだろう。とはいえ厳密には、ネームバリューの高いビッグクラブに譲歩する姿勢を見せると言うべきか。CLでは試合ごとの勝利報酬額、そして過去10年間の成績に基づく支給額が引き上げられたばかり。いずれも、強豪の懐がより潤うと言って差し支えない措置だ。
プレミアリーグでも、20チームが均等に分け合ってきた海外放映権収入に関し、来季からは上位6チームの取り分が増えることで合意に至っている。加えて、要求を飲ませるための脅しでしかなかったスーパーリーグ構想が現実味を帯びたとなれば、エリート勢はより強気に出てくる。その利己主義に、どこまで耐えられるかも疑問だ。