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なぜリスグラシューは差し切れたか。
エリザベス女王杯を決した「魔法」。

posted2018/11/12 11:30

 
なぜリスグラシューは差し切れたか。エリザベス女王杯を決した「魔法」。<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

岩田康誠のクロコスミアが逃げ切るかと見えた展開を、モレイラとリスグラシューが一撃でひっくり返した。

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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Yuji Takahashi

「マジックマン」が驚異的な末脚を引き出し、先行有利な流れを鮮やかに差し切った。

 第43回エリザベス女王杯(11月11日、京都芝外回り2200m、3歳以上牝馬GI)を、ジョアン・モレイラが騎乗した3番人気のリスグラシュー(4歳、父ハーツクライ、栗東・矢作芳人厩舎)が優勝。GIで2着4回というシルバーコレクターが、8度目の挑戦で初めてGIタイトルを手中にした。また、モレイラにとっても、これがJRA・GI初勝利であった。

 ゲートがあくと、岩田康誠が乗る9番人気のクロコスミアがハナに立った。

 1000m通過は1分1秒4。逃げ・先行馬に有利な、ややゆったりとしたした流れだ。

 クロコスミアは昨年のこのレースで道中2番手から粘り込み、今年と同じ9番人気ながら首差の2着になった。そのときの1000m通過は1分2秒0。今年より遅かったが、先頭から最後尾まで15馬身以上の縦長になっていたので、実は、先行馬に厳しい流れだったのかもしれない。

 そう考えると、今年はよりチャンスが大きくなったと言える。

唯一33秒台の末脚を繰り出した。

 クロコスミアは3コーナーを回りながらリードを3馬身ほどにひろげた。そこから下り坂を生かしてスピードに乗り、直線に向いた。岩田は、早めにスパートして後続になし崩しに脚を使わせ、ヨーイドンの瞬発力勝負ではなく、前にいる自分に有利な流れに持ち込もうとしたのだ。

 その戦術が見事にハマり、クロコスミアが逃げ切るかに見えたが――。

 外からリスグラシューが凄まじい末脚で追い込んできて、クロコスミアに並びかけたと思ったら、もう前に出ていた。

 勝ちタイムは2分13秒1。上がり3ハロンは出走馬中唯一の33秒台の33秒8。

 昨年と同じく首差の2着になったクロコスミアだって34秒7という、なかなかの脚で上がっていた。そこから3馬身遅れた3着のモズカッチャンのラスト3ハロンも34秒7、4着のレッドジェノヴァは34秒5、5着ノームコアは34秒9、6着カンタービレと7着フロンテアクイーンは34秒7と、後続はみなクロコスミアと同じくらいの末脚しか使うことができなかった。

【次ページ】 何度見てもわからない爆発の理由。

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