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レッドソックス世界一への戦略は、
データ+オールドスタイルの回帰。
posted2018/11/12 10:00
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
Getty Images
名門レッドソックスが、2013年以来、5年ぶり9回目となるワールドシリーズ制覇を果たした。公式戦でメジャー最多、球団新記録となる108勝を挙げた実績通り、ポストシーズンでは、宿敵ヤンキース、昨季世界一のアストロズ、2年連続でワールドシリーズへ進出したドジャースと、目の前に立ちはだかる強敵を次々に倒し、頂点へたどりついた。
組織全体で戦うチームだけに、明確な勝因を挙げることは不可能に近い。
ただ、近年の主流となった最新のデータ野球と、古き良き時代の「オールドスタイル」を融合させたような戦術、戦略が、レッドソックスの戦いぶりの随所に見え隠れした。無論、それが直接的な勝因というわけではないだろう。
その一方で、根本的なチーム再建に、組織として取り組んできた結果であることは間違いない。
データ重視からの再改革。
'04年、'07年、'13年。
球界屈指のキレ者として知られたセオ・エプスタインGM(現カブス社長)の舵取りもあり、10年間で3回世界一の座に就くなど、当時は黄金時代を迎えたかと思われた。
ところが、'14、'15年は2年連続で地区最下位。まったく別のチームのように低迷し、坂から転がり落ちるかのように底辺へ沈んだ。かつてない屈辱を味わったことで、オーナーのジョン・ヘンリー氏は、人事だけでなく、チームの体質を含めた大胆な改革に着手した。
「我々は、(データなどの)分析に頼り過ぎていたと思う」
エプスタイン氏が推進してきたデータ重視の野球を見直し、「ひと昔前」の世代に、再建の活路を求めた。
1997年にマーリンズを世界一に導いたデーブ・ドンブロウスキー氏を、最高責任者の編成本部長として招聘。その後、元ブレーブスGMのフランク・レン氏、元ロイヤルズGMのアラード・ベアード氏の2人を、補佐役としてフロント陣に加えた。
さらに、昨年11月には、アスレチックス、カージナルスの監督として世界一3回の実績を残したトニー・ラルーサ氏を特別補佐として招くなど、いずれも「オールドスタイル」で球界を渡り歩いてきたスタッフで固めた。