プレミアリーグの時間BACK NUMBER
モウリーニョは時代遅れではない。
マンUの停滞は采配以外の面にも。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byUniphoto press
posted2018/10/27 17:00
ここ最近の表情は苦いものばかり。しかしモウリーニョならば、現状を打破する采配を見せるのではないか。
マケレレは擁護派の1人。
このチャントが起きたのは後半ロスタイム、チェルシーの同点ゴールでのこと。モウリーニョが、ベンチ前で喜んだ相手チームスタッフに怒りを露わにした際の反応だった。
その20分ほど前、マンUの2点目でモウリーニョはベンチ最前列で1人だけ座ったまま、一瞬両手の拳を握りしめたにすぎなかった。それは、古巣への「敬意は忘れたくない」との試合前の言葉通りだ。最終的には土壇場で勝利を逃した悔しさから、古巣に食ってかかろうとしたわけだが、咎められるべきは挑発同然の行為に走ったチェルシーのアナリスト(分析担当)ではないだろうか。
礼を欠くチャントを口走った東スタンドの一部観衆の前で、モウリーニョは3本指を立てるジェスチャーを繰り返しながら、チェルシーに3度のプレミア優勝をもたらしたことを強調した。メディアでは、この仕草が「個人」の手柄のように誇張したと受け止められ、チェルシーファンとの関係が修復不可能なレベルにまで崩れたとする意見もある。
だが、感情的な問題は時間が解決してくれる。筆者はそう思う。
そして、モウリーニョには「私が成し遂げた」と主張する資格があるとも。
2004-05シーズンから一気に加速したチェルシーの強豪化は、モウリーニョの監督就任が最大の要因だった。その前シーズンから在籍していたクロード・マケレレ(現KASオイペン監督)は現在も擁護派の1人で、『サン』紙にこのようなコメントを寄せている。
「モウリーニョがチームを“ウィナー”に変えた」
勝ち慣れていなかった当時のチェルシーに「勝者のメンタリティ」を植えつけ、2012年のCL優勝を含む黄金期の礎を築いた。その功績に相応の敬意が示されて然るべきなのだ。
采配で逆転勝利に導いている。
さらには過去だけではなく、マンUでの現在に関しても同様であるべきだとも思う。
第8節ニューカッスル戦(3-2)を前に、「結果にかかわらず解任濃厚」と報道される事態などもってのほか。試合自体も、モウリーニョ采配が逆転勝利を呼んだ。
思い切った選手交代とシステム変更により、ポール・ポグバがほぼCBのような位置で影響力を発揮。前半途中に投入されたフアン・マタのゴールから、先発のアントニー・マルシャルが同点ゴール、最後に途中出場のアレクシス・サンチェスが逆転のヘディングを決めた。
終わってみればサー・アレックス・ファーガソン時代を彷彿させる、ラスト20分間での3得点奪取だった。
試合後、モウリーニョは交代を命じられたスコット・マクトミネイとマーカス・ラッシュフォードの若手2名について「プレッシャーのなかで萎縮していた」と説明。この発言を問題視する向きもあった。
この手の意見は「マンUの監督なのだから……」との視点から発せられるようだが、だとすれば「マンUの選手なのだから」と、外部からのプレッシャーや指揮官からの叱咤に怯まない気骨が求められてもよいのではないか?