プレミアリーグの時間BACK NUMBER
モウリーニョは時代遅れではない。
マンUの停滞は采配以外の面にも。
posted2018/10/27 17:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Uniphoto press
ジョゼ・モウリーニョが、新進気鋭のCL優勝監督としてプレミアリーグに現れたのは14年前。就任1年目にしてチェルシーに半世紀ぶりのリーグ優勝をもたらし、続いてクラブ史上初のプレミア2連覇を達成。それによって「スペシャル・ワン」の自称は“イングランド公認”となった。
それが、マンチェスター・ユナイテッドを率いる今では、「もはやスペシャルではない」とのフレーズが、国内各紙や試合会場で囁かれている。
識者の見方も冷たい。
クラブOBのポール・スコールズは、マンUを「もしメッシでさえ、移籍してきたら精彩を欠くのではというチームにしてしまった」と断言。元チェルシーのDFロベルト・フートは「時代の流れに追いつく必要がある」と指摘。モウリーニョに対する厳しい意見が後を絶たない状況だ。
かつての古巣から「失せろ!」。
確かに、「10年ひと昔」とは言う。
しかし、11年前にいったんイングランドを去ったモウリーニョは、続くイタリアでインテルをセリエA連覇とCL優勝に導いている。欧州制覇の過程では、16強でカルロ・アンチェロッティ率いるチェルシーを下し(計3-1)、改めてイングランドのメディアを唸らせた。復帰を果たしたチェルシーで自身3度目のプレミア優勝を実現したのは、わずか3年前のことだ。
リアルタイムで物事が進む今日では、それもすでに「昔」なのだろう。
2015年12月、モウリーニョが再びチェルシーを去った直後のホームゲームでのこと。スタンフォードブリッジには、事実上の解任に追いやった「暗躍者」と噂されたエデン・アザールら主力を責める横断幕が張られ、彼ら選手へのブーイングが聞かれた。
だが翌シーズンにマンU新監督として舞い戻ると、モウリーニョに対して裏切り者を意味する「ジューダス(ユダ)」との罵声がベンチ側の東スタンドから飛んだ。
そして去る10月20日のプレミア第9節(2-2)、通算4度目の「旧ホーム訪問」ともなると、合唱ほどではないが“Fワード”を含めた「失せろモウリーニョ!」とのチャントまで聞かれた。